野球の国際大会「ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12」は13日に日本、台湾で1次ラウンドB組が開幕。連覇を目指す日本代表は初戦のオーストラリア戦(バンテリン)に9―3と大勝した。10日のチェコ代表との強化試合(同)に続き、2試合連続で森下翔太外野手(24=阪神)を4番に据えて侍打線は13安打と大爆発したが、取材に応じた井端弘和監督(49)は絶対的主砲を欠く〝4番問題〟に苦悩し続けていた。
終わってみれば快勝だった。中でも10日のチェコ戦で初めて4番に座って先制2ランを含む2安打2打点と大暴れした森下が、この日の本番でも4打数3安打2打点と白星発進に大貢献。2試合連続で虎の若きスラッガーに重責を託した井端監督は「当然、(8回の)最後のタイムリーは試合の中で大きかった」と最敬礼した。
ただ、4番を誰にするかは侍指揮官の悩みの種だった。最大の誤算は4番の最有力だった岡本和(巨人)が腰痛で辞退したことだ。今季はG不動の4番として全143試合に出場し、打率2割8分、27本塁打、83打点をマーク。井端監督も10月9日の代表メンバー発表会見で「4番はやっぱり、今のところ可能性が高いのは岡本選手。昨年のWBCを経験してひと回り大きくなった。非常に頼もしい」と期待を寄せていた。その発表前には村上(ヤクルト)が右足親指の骨折で出場できなくなる非常事態に陥っていただけに、相次ぐ4番候補のアクシデントは井端ジャパンにとってまさに踏んだり蹴ったりの船出だった。
10月29日から宮崎合宿をスタートさせても、井端監督はどんな打順で臨むかについて「まだ分からないです」と明言を避けてきた。特に4番打者については「どこでも打てるバッターがいっぱいいる。そこら辺は困ってないです。全く4番の経験がないっていうのは(いない)。栗原(ソフトバンク)選手もそうだし、小園(広島)選手も打っていたし、清宮(日本ハム)選手も牧(DeNA)選手も打ってますし、全然その辺は困ってないです。大丈夫です」と強調していた。
しかし、本音は違っていたようだ。侍関係者は「所属チームで経験があるといっても、4番は誰でも務まるものではない。実際、今季は不動の4番がいた巨人とソフトバンク(山川)がリーグ優勝しているからね。岡本の代わりは誰でも簡単に務まるものではないし、岡本の辞退ほど井端監督にとって頭が痛いものはなかったはず。世界一になるために誰をチームの核となる4番に据えるのか、相当苦心して考えていた」と指揮官の胸中を代弁する。
ここまで実戦があった今月5日の広島との練習試合(SOKKEN)では清宮、9日のチェコ代表との強化試合(バンテリン)は牧、10日の同戦(同)は森下といったように毎回4番を代えて試してきた。
今大会の本番前に井端監督を直撃すると「ある程度、みんな起用してみたから適性はこの辺かな、ここにも置いた方が面白いなっていうのを、すり合わせてどうしようかっていうところ。今、言えるのは1番(桑原=DeNA)、2番(小園)、3番(辰己=楽天)はこのままでいこうかなと。あとは別に清宮選手が5番でもおかしくないし、栗原選手が6番でもおかしくない」と吐露。
続けて「4番は悩ましい? そうそう。(岡本和の不在で)だからいろんなことができるけど、やっぱり打順って流れだから。4番が牧選手でも森下選手でも佐野選手でも、そんなに遜色なくやってくれるっていうのはある。流れがどれがいいのかなと。誰がこの後を打った方がいいのかとか、ここがこうなので、だからいい流れになるなとかっていうのはある。あとは誰がいいのかっていうところだけ」と打ち明けていた。
「4番・森下」で白星スタートを決めた井端ジャパン。これで指揮官の苦悩も解消されるか。