怪物出現の宿敵・韓国に再浮上の兆しか。侍ジャパンは国際大会「プレミア12」1次リーグB組の韓国戦(台北ドーム)に臨み、6―3の逆転勝ち。この日も宿敵との一戦は一進一退の攻防が終盤まで続き、牧(DeNA)の決勝打で競り勝った。近年、低迷が危惧されてきた韓国野球。切実なライバル国に現れた超新星・金倒永内野手(21=キム・ドヨン)の実力に、日本球界からは感嘆の声が相次いだ。
大会連覇を目指す侍ジャパンがオープニングラウンドの大一番を苦しみながらも制した。今大会、日本のエースを担う高橋宏(中日)が4回7安打2失点。初回から得点圏に走者を背負い、2回に先制を許すなど序盤から重苦しいゲームとなった。2度リードを奪われる厳しい展開も5回に牧の2点打で試合をひっくり返し、7回には森下(阪神)のダメ押し弾で宿敵に引導を渡した。
一方で相手の韓国は近年、WBCで3大会連続の早期敗退を喫するなど著しい低迷を強いられている。それでも日本戦ではやはり意地を見せた。執念を燃やす戦いぶりもさることながら〝ニュースター〟の存在が日本にとっては大きな脅威を与えていた。
侍ジャパンの面々から警戒心を一身に注がれていたのは、韓国の3番打者・金倒永。今季KBOで打率3割4分7厘、38本塁打、40盗塁で「トリプルスリー」を達成した怪物スラッガーに、日本サイドからは「実力は本物」との評価が並んだ。14日に行われた韓国―キューバ戦(台湾・天母スタジアム)にはMLB20球団のスカウトが集結。同様に視察したNPBのある球団幹部も金倒永の潜在能力の高さを次のように評し、絶賛した。
「メジャースカウトが大挙していましたね。われわれが見た印象では、目がいい。150キロ超の速球を130キロくらいの感覚で打ち返しているようなイメージ。日本で出てき始めの頃の大谷(翔平投手=ドジャース)みたいな感じ。昨日の試合(14日・キューバ戦)も第1打席で空振り三振した後、モイネロから次の打席の初球に満塁弾を放ったように、その辺の対応力もさすが。一目で違いを感じるバッターだなと分かる選手でした」
最大級の賛辞はお世辞抜きだった。別のNPB関係者も「将来的に日本に来てほしいですが、あのクラスは…」と〝メジャー直行〟が最適ルートと認めざるを得ない逸材で「今後の国際大会で日本にとって手ごわい相手になるのは間違いない」とも続け、強い警戒感をにじませた。
低迷が続いていた韓国球界に現れた強打の右打ち三塁手。この日の日本戦では4打数無安打に終わったものの、試合後の井端監督も金倒永について「キューバ戦の2本のホームランも見せてもらった。(今日も)やっぱり迫力がありました」と舌を巻いていた。
パワーとスピードを兼ね添えた世界クラスの才能を持つ宿敵の超新星に、日本陣営が大きな衝撃を受けたことは間違いない。「韓国の大谷翔平」との異名も持つ金倒永が今後、侍ジャパンにとって末恐ろしい〝脅威の存在〟として立ちはだかることになりそうな気配だ。