〝Vオーラ〟が漂ってきた。大相撲九州場所8日目(17日、福岡国際センター)、大関琴桜(26=佐渡ヶ嶽)が幕内美ノ海(31=木瀬)を退け、7勝目(1敗)。中日を折り返し、大関豊昇龍(25=立浪)らと賜杯レースの先頭を走っている。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(40=本紙評論家)は琴桜の相撲内容を分析し、悲願の初優勝の可能性を占った。
琴桜が初顔合わせの相手を一蹴した。肩越しに右上手をつかみ、美ノ海は頭をつけながらこらえる展開。大関は左が入らないとみるや、すかさず上手ひねりで土俵に転がした。取組後は「中途半端なことをせず、目の前の一番に集中して取れている。落ち着いていけたと思います。変わらずにやっていくだけ」とうなずいた。
この日の琴桜の相撲内容について、秀ノ山親方は「相撲巧者の美ノ海に対して慌てることなく、ドシッと構えで相撲を取った。右上手をつかみながら、左をねじ込もうとする動きで相手に動く隙を与えなかった。美ノ海が前傾姿勢で押せないと思ったら、ひねり技も出せる。琴桜の強みである懐の深さが出た一番だった」と分析した。
中日を折り返して豊昇龍らと首位で並び、新大関大の里(24=二所ノ関)が1差で追う。秀ノ山親方は、弟弟子でもある琴桜の表情に強い〝覚悟〟を感じたという。「この1年、優勝を逃して悔しい思いをしてきたぶん、今場所にかけていると思う。バタバタするところがなくなり、面構えを見ると、どの大関よりも落ち着いている印象。どことなく優勝する力士がつくり出す雰囲気、オーラのようなものが漂い始めている」と指摘した。
残り7日間は、日ごとに増していく重圧とも闘っていくことになる。秀ノ山親方は「ここからは優勝へ向けて、周りが盛り上がる中で相撲を取る状況になっていく。自分も緊張するけど、相手も同じくらい緊張していると思えるかどうか。これまで通り慌てず、自分の強みをぶつけることさえできれば、おのずと初優勝に近づいていく」とアドバイスを送った。
果たして、琴桜は悲願の初賜杯にたどり着くことができるのか。残りの戦いからも目が離せない。