【球界こぼれ話】日本ハムの秋季キャンプを取材していた今月3日、あるニュースが舞い込んできた。加藤豪将内野手(30)の電撃引退の一報である。
米カリフォルニア州生まれの加藤豪は2013年に米ドラフト2巡目(全体66位)でヤンキースに入団。その後、マーリンズやパドレスのマイナーを経て22年にブルージェイズでメジャーデビューを果たした。同年オフにはドラフト3位で日本ハムに入団。“逆輸入選手”として1年目から62試合に出場し、6月には新人記録となるデビューから10試合連続安打を放つ活躍も見せた。
だが、今季はチーム内のシ烈なポジション争いもあり出場機会が激減。計28試合の出場にとどまったこともあり、日本球界わずか2年でユニホームを脱ぐ決断をした。
この30歳での現役引退。ファンや一部球団関係者からは「まだ選手としてプレーできる」という声もあるが、本人の性格や人柄を考慮すれば当然なのかもしれない。彼は以前から球界で選手として以上に、裏方業や選手を支える仕事に適した人物として高い評価を受けていたからだ。
ヤンキースのマイナー時代から物腰が柔らかく、気遣いも人一倍。取材時には必ず立ち止まる丁寧な対応で、歩きながら話す“ぶら下がり取材”は「僕には合わないし、取材する方々にも失礼」と拒絶するほどの紳士ぶりだった。
人格者であることに加え、マイナー時代が長かったこともあり米球界にも精通。取材などで複雑な移籍ルールや契約問題などが出てくると、記者以上に積極的に調査に乗り出す勤勉さも持ち合わせていた。
こうした姿を見ると裏方業やビジネスマンとしての適性を感じるのは言うまでもない。日本ハムの球団幹部らも昨オフから「豪将は野球の才能だけでなく語学を含め人間的にも魅力がある。現役引退後は日米野球界の橋渡し役になってほしい」と将来を嘱望していた。こうした周囲の評価を鑑みれば、本人がこのタイミングで引退を決断したのもうなずける。
今月10日には自身のSNSで古巣・ブルージェイズのフロント入りを表明。直後には米メジャー挑戦が注目されるロッテ・佐々木朗希の移籍に関し、私見を述べながら日本球界への提言も行っている。今後はどんな形で日米球界に寄与してくれるのか。新たな道での活躍を期待せずにはいられない。