「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家の野崎幸助さん(当時77)を殺害した罪に問われている元妻の須藤早貴被告(28)の論告求刑公判が18日、和歌山地裁で行われ、無期懲役が求刑された。美女4000人を抱き、総額30億円を貢いだと豪語し、メディアにも出演していた野崎さんが被害者とされる注目の裁判。これまでの公判で須藤被告の口から事件の核心から夜の性生活まであけすけに語られた。
起訴状によると2018年5月、須藤被告は野崎さん宅で何らかの方法で野崎さんに致死量の覚醒剤を摂取させ死亡させた。裁判を通じて須藤被告は一貫して容疑を否認し、無罪を主張。
須藤被告は17年12月に初対面の野崎さんから現金100万円を手渡されプロポーズされた。後日、須藤被告は毎月100万円の支払いと性行為はしないことなどを求めた。18年2月に入籍したが、野崎さんは約束に反して性行為を求めてきたという。結婚初夜には手ですることをお願いされ、ゴム手袋を着用して行ったが、勃たなかったと証言。
その3か月後に野崎さんは亡くなった。検察官から野崎さんが死んだ時の感情を問われると須藤被告は「どちらかといえば『無』ですかね」と答えた。
須藤被告には、セクシービデオに出演の過去も明らかになっている。結婚前に複数の高級デートクラブに登録し、デリヘルにも勤務。接客中にAV関係者と知り合い、出演を決意。17年に4本のセクシービデオに出演し、計38万円を得た。
出演の目的はお金だけではなく、「有名男優に会いたい」というミーハーな理由もあったようだ。公判では検察側から出演歴を消そうとしていたことを指摘され、須藤被告は中学の同級生から「見たよ」と連絡があり、広められる可能性があったため動画を削除しようとしたと弁明する場面もあった。
事件のポイントとなる覚醒剤については「(野崎さんから)『覚醒剤でも買ってきてよ』と言われた。冗談だと思って『お金くれたらいいよ』と言ったら20万円渡してきました」と購入したことを認めた。
また須藤被告のスマホに「老人 死亡」や「完全犯罪」などの検索履歴が残っていた。理由について「不気味な事件や未解決事件が好きだったので以前から調べていた」と主張した。
検察側は論告で「遺産を得るための殺人は強盗殺人と同程度の悪質さで、有期懲役を選択する事情はない」と糾弾し、無期懲役を求刑した。
「検察側は決定的な証拠がない中で、状況証拠を一つひとつ積み上げていった。しかし致死量に至る覚醒剤をどのように摂取させたのかは謎のままです」(犯罪に詳しいジャーナリスト)
注目の判決は12月12日に言い渡される。