バイデン米大統領は17日、ウクライナに対し、米国が供与した地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」(射程300キロ)によるロシア領内への攻撃を承認した。ウクライナのゼレンスキー大統領は実戦投入の考えを表明した。
ゼレンスキー氏は再三、米国製ミサイルの使用を求めてきたが、バイデン氏はこれまでロシアを刺激することを懸念し、応じてこなかった。ロシアのウクライナ侵攻開始から19日で1000日となるのを前に、武器の使用許可に転じた。
来年1月20日に就任するトランプ次期大統領が交渉による侵攻の早期終結に意欲を見せる中、バイデン氏がウクライナが不利な立場に置かれるのを防ぐ思惑もあるとみられる。
ロシアのプーチン大統領の支持者で上院外交委員会副委員長であり元治安部隊将軍のウラジミール・ジャバロフ氏は「これは第3次世界大戦の始まりに向けた非常に大きな一歩だ。2か月後には何の責任も負わなくなる老人だ」と非難した。
トランプ次期大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏はXに「軍産複合体は、私の父が平和を築き、人命を救う機会を得る前に、第3次世界大戦を確実に起こしたいようだ。数兆ドルを確保しなければならない」と投稿した。
さらに欧州メディアは「クレムリンは、すでに激化している欧州全域での破壊活動やその他のハイブリッド戦争をさらに激化させる可能性は十分にある」と指摘した。
なぜ、バイデン氏は世界を不安にさせる決断をしたのか。
軍事事情通は「米国としては、ウクライナが一部制圧したロシア西部クルスク州への北朝鮮兵派遣に対してのけん制です。ATACMSはロシア全土ではなく、北朝鮮兵がいるクルスク地域のみでの使用が承認されたとのことですから。北朝鮮に対して、もうロシアに派兵するなというメッセージです。ロシアもミサイルを迎撃するのは簡単ではないが、ロシアの防空システムはATACMSにうまく対処でき、低空で忍び寄るドローンよりもはるかに一般的だと冷静に分析しているようです」と指摘している。