ロシアのプーチン大統領は19日、核兵器使用の基準を従来よりも引き下げた「核抑止力の国家政策指針」(核ドクトリン)の改定版を承認する大統領令に署名した。同日、法律情報ポータルに公開された。政令が発効した。核攻撃からの第3次世界大戦勃発が不安視されている。
改定版は、核攻撃の根拠は「核保有国の支援を受けた非核保有国によるロシア連邦とその同盟国に対する侵略」、およびドローンを含めた非核手段による大規模な空爆だという。
つまり、ウクライナが欧米諸国から供与されたミサイルをロシアに対して使用した場合、核攻撃の引き金となる可能性があると警告したわけだ。これまでは、核兵器を保有する国から攻撃された場合にのみ核兵器で対抗するとしていた。
プーチン氏は9月25日のロシア安全保障理事会の会合で、核抑止原則の更新を提案していた。そして、今回の改定版発効となった。
ペスコフ大統領報道官は「この変更は欧米諸国への明確なシグナルと見なされるべきだ。これは、必ずしも核ではないさまざまな手段でわが国への攻撃に参加した場合の結果をこれら諸国に警告する信号だ」と述べた。
バイデン大統領は17日、ウクライナに対し、米国が供与した地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」(射程300キロ)によるロシア領内への攻撃を承認した。英国は空中発射型巡航ミサイル「ストームシャドー」(射程250キロ)、フランスは同型の「スカルプ」をウクライナに供与しており、それぞれロシア領内に発射する許可を検討している。プーチン氏はこの2日後に最新の核ドクトリンを発効した。
軍事事情通は「当初、プーチン氏が想定していた早期決着というシナリオは失敗し、19日でウクライナ侵攻から1000日となり、〝千日戦争〟と呼ばれるようになりました。体面を保つための国内向けのテコ入れでしょう。そして、ウクライナが一部制圧したロシア西部クルスク州でのミサイル発射はまだ許しても、ロシア領土の奥深くへのミサイル攻撃は絶対に許さないという意思表明です。実際には核攻撃は実行されないと思いますが、欧米諸国がウクライナに軍事支援を提供することを躊躇させる効果はあるでしょう」と指摘する。
しかし、誰もが想定していなかったウクライナ侵攻をやったプーチン氏だけに予断は許さない。
「文書の基本条項の一つとして、核攻撃の決定は、ロシア大統領に委ねられています。プーチン氏を止められる人はいないので、ボタンの掛け違いが続いての核ミサイル発射からの第3次世界大戦も不安視されます」(同)
実際、〝プーチンの代弁者〟でロシア政治研究所所長のセルゲイ・マルコフ元大統領顧問はBBCラジオ4の「ワールド・アット・ワン」のインタビューで、核戦争の可能性を指摘。危険レベルは一気に高まった。