見えない厚い壁を突破した。ドジャースの大谷翔平投手(30)が2年連続3度目のMVPに輝いた。全米野球記者協会(BBWAA)所属の記者による投票結果が21日(日本時間22日)に発表され、2021年、23年に続く3度目の満票で受賞した。DH専任の選手として初受賞に加え、3度目の満票も史上初だ。さらに両リーグでのMVPは史上2人目で、リーグをまたいでの2年連続は史上初とまさに初づくしだ。史上初の「50本塁打―50盗塁」を達成し、54本塁打、130打点で2冠を獲得。「DH否定派」を黙らせる活躍でライバルに完勝した。
歴史的な1年を史上12人目となる3度目のMVP獲得で締めくくった。満票も2年連続3度目で、DH専任では史上初。両リーグMVPもフランク・ロビンソン(1961年レッズ、66年オリオールズ)に続く2人目だ。リーグをまたいでの2年連続も史上初。とてつもない偉業だ。
笑顔がはじけた。茶色のジャケット、黒いTシャツ姿でMLBネットワークの番組に登場。プレゼンターを務めた同僚のクレイトン・カーショーから受賞を伝えられると同時に同席していた真美子夫人と笑顔で喜んだ。2人の間に座っていた愛犬デコピンの頭をなでるとソファから跳んで消えた。その後、関係者らとハグして喜んだ。
昨年9月に右ヒジを手術したため今季は打者に専念。前人未到の「50―50」を達成し、54本塁打、130打点、134得点、99長打、23年ぶりに大台に乗せた411塁打、出塁率3割9分、長打率6割4分6厘、OPS1・036はいずれもリーグ1位。打率3割1分、59盗塁はリーグ2位だった。bWAR9・2は主にDHで出場した選手では史上最高。1995年にエドガー・マルティネス(マリナーズ)がマークした7・0を大幅に塗り替えた。
これまでDH専任の選手が受賞した例はないが、最終候補に残ったメッツのフランシスコ・リンドア内野手(31)、ダイヤモンドバックスのケテル・マルテ内野手(31)を圧倒。ニューヨークメディアは遊撃守備で貢献しているリンドアこそがMVPと最後まで主張したが、結果を見れば明らかだった。
ドラマを超えたドジャース1年目だった。昨年12月にプロスポーツ史上歴代最高額の10年総額7億ドル(約1015億円=合意当時)で契約。5月を14本塁打、13盗塁で終えたが、左手を骨折したベッツに代わって1番に座った6月17日から加速した。8月23日の本拠地レイズ戦でサヨナラ満塁弾を放ち、史上6人目の「40―40」を達成。出場126試合目での到達は史上最速だった。その勢いは止まることがなく、9月19日の敵地マイアミでのマーリンズ戦で6打数6安打10打点、3本塁打、2盗塁と「野球史上最も偉大な日」とも称される活躍で史上初の「50―50」を達成した。
キャンプ地アリゾナ州グレンデールが大谷フィーバーで沸いていた2月28日に突然の結婚発表。世界の野球ファンを驚かせた。「感謝しかない」。真美子夫人という人生の伴侶と愛犬デコピンが支えになった。
打者の“一刀流”でチームを引っ張り、メジャー7年目でポストシーズンに初進出すると悲願の世界一に駆け上がった。来季はいよいよ投手に復帰する。ワールドシリーズ第2戦で亜脱臼した左肩を手術したため、登板がずれ込むことも予想されるが、投打二刀流で世界の野球ファンを驚かせてくれるだろう。
これまでも不可能と思われたことを実現した大谷。来季はまさに夢の本塁打王とサイ・ヤング賞のダブル獲得をやってのけるかもしれない。
【喜びのコメント】「ドジャースの一員の一人として代表してもらったと思っている。それくらいみんなでつかみ取った。一番はWSで勝てたことが一番目指してたところ。来年も引き続きチームのみんなで頑張って、今はリハビリをしているのでまた復帰してシーズンを頑張りたいなと思っています。MVP取りたいなという気持ちでシーズンに入っていない。ドジャースという新しいチームに来て、早くチームの一員として認められたいという思いで、特に前半はやっていた。(サイ・ヤング賞は)取れたら最高ですし、まずは復帰してもう1回さらに強くなったパフォーマンスを出して自信を持ってマウンドに上がるのが目標かなと思います」