新横綱誕生なるか。大相撲九州場所千秋楽(24日、福岡国際センター)、大関琴桜(27=佐渡ヶ嶽)が大関豊昇龍(25=立浪)との相星決戦を制し、14勝1敗で念願の初優勝を果たした。祖父は元横綱の先代琴桜、元関脇琴ノ若の佐渡ヶ嶽親方を父に持つサラブレッドが、ついに覚醒。兄弟子で元大関琴奨菊の秀ノ山親方(40=本紙評論家)は、琴桜の成長を分析した上で、次の初場所(来年1月12日初日、両国国技館)での綱とりに太鼓判を押した。
琴桜が念願の賜杯にたどり着いた。豊昇龍の強烈な突き押しにもひるまず、相手の上手投げも踏ん張って残した。最後は豊昇龍が足を滑らせたところではたき込み。執念で白星をたぐり寄せた。琴桜は「決定戦を経験したり、優勝に近づいても優勝できない場所が続いて苦しい思いもあった。しっかり辛抱してやれば、賜杯を抱けるんだと実感できた。初めての賜杯? 重かったです」とかみしめた。
大関5場所目での初優勝は、祖父で元横綱の先代琴桜と同じ。先代が最後に優勝してから51年ぶりに賜杯を抱いた琴桜は「そろそろ優勝しないと、先代にも怒られると思った」と安堵の表情を浮かべた。佐渡ヶ嶽部屋からの優勝は2016年初場所の大関琴奨菊以来、8年ぶり。V決定の瞬間は、兄弟子で10月に独立した秀ノ山親方も特別な思いで見守っていた。
同親方は「(秀ノ山部屋の)打ち上げ会場から見ていました。やっぱり、うれしい。豊昇龍との意地と意地のぶつかり合いの中でも、どっしりと腰が重く、落ち着いた相撲を取っていた。勝ち負けよりも、自分の相撲を取り切ろうとしていた姿に、成長を感じましたね。初優勝の重圧をはねのけて、ひと皮むけた印象」とたたえた。
場所前に行われた一門の連合稽古で、琴桜の並々ならぬ意欲を感じ取っていたという。琴桜は新大関大の里(二所ノ関)と三番稽古で激突。「琴桜には以前から『稽古場でナメられたら、本場所で絶対に勝てない。相手を叩きつぶすぐらいのつもりでいかないといけない』と言っていた。大の里は探りながらやっていたが、琴桜は目いっぱいいっていた。『俺も大関だぞ!』という気持ちが出ていた」
14日目には、その大の里を撃破。先輩大関の貫禄を示し、千秋楽の優勝につなげた。高田川審判部長(元関脇安芸乃島)は、次の初場所が綱取りの場所になることを明言。横綱への挑戦権を手に入れた。今回優勝したことで、琴桜が3大関の中では最も番付の頂点に近い存在になったことは間違いない。
秀ノ山親方は「琴桜は今年の年間最多勝(66勝)にもなった。もともと確実に2桁の白星を挙げられる安定感がある。今回の初優勝で、本人の中でも次の目標である横綱がはっきりと見えたはず。もちろん、2場所連続優勝の可能性も十分にあると思う」と太鼓判を押した。
その琴桜は「先代は横綱ですし『ここで満足するな』と言われる。ここからまた次の場所に向けてしっかりと準備して、先代に追いつけるように、やっていければ」と綱とりへ意欲十分。待望の新横綱誕生なるか、今から注目だ。