「最強ジャパン」結成は、やはり難題なのか――。野球の国際大会「プレミア12」は24日に決勝が行われ、台湾が日本を破って初優勝。大会連覇を狙った日本の全勝優勝を阻み、新勢力として世界に大きなインパクトを与えた。
今大会に限ったことではないが、侍ジャパンのメンバー編成は毎回難航する。事情はさまざまだが、今回も首脳陣が招集を望んだ候補選手が出場を辞退するケースがあった。井端ジャパンの中核を担う岡本(巨人)、村上(ヤクルト)、近藤(ソフトバンク)らは故障のため招集を見送らざるを得なかったが、明確な辞退理由が見当たらないケースもあった。
世間的に「辞退は悪」という風潮があるのは否めない。選手それぞれに立場があり、事情がある。1年4か月後の2026年3月には、日本の大会連覇がかかる「第6回ワールドベースボールクラシック(WBC)」が控える。野球の国際大会では、文字通り最高峰のトーナメントだ。MLB機構、選手会が主催する大会だけにメジャーリーガーらが積極的に参戦。ゆえに、選手の憧れも強い特別な大会だ。
プロ野球シーズン開幕前の開催は当然ながらネックだ。大会価値と天秤にかけて、出場を望む選手もいるだろう。ただ、当事者でなければ分からない苦悩も多い。「もう一度行きたいかと聞かれれば、決して即答はできません」。WBC出場経験のある現役選手の言葉だ。
プロ野球選手は個人事業主。所属球団への貢献度、シーズン成績が翌年以降の立場を保証する。大会の前後で大きく調整環境は異なり、大会中の起用法によっては実戦勘の問題も出てくる。「パフォーマンスの低下や故障のリスクは高い」(前出の選手)。心身の疲弊や不調も経験してみなければ分からない。「十分とは言えない補償の問題もあると思う。みんな、いろんなことを悩み抜いて決断している。日の丸を背負う経験が特別であることは確か。一方で『もう一度』とは答えられない現実もある。どちらの選択も尊重できる」(別のWBC出場経験者)。
最高峰のWBCでさえ、周囲の想像以上に選手側が大きな負担を感じている現実がある。時代は移り変わり、選手個々の価値観も多様化している。それぞれの力量や年齢に応じて価値判断も変わる。選ぶ側、選ばれる側に苦悩がある。「プレミア12」が終わり、次は井端ジャパン集大成の「WBC」に野球界の関心は向く。選手選考を巡る問題は時代の流れとともに、より難しさを増しているのは間違いない。