【取材の裏側 現場ノート】新日本プロレス来年1月4日東京ドーム大会で海野翔太(27)がIWGP世界ヘビー級王者ザック・セイバーJr.(37)に挑戦することが決定し、ファンからは賛否の声が巻き起こった。海野が挑戦表明した10月両国大会、11月大阪大会では、ともに会場からブーイングが発生している。
普段からブーイングされるような不人気選手ではなく、むしろ将来有望なホープという評価が圧倒的に多い。だが、プロレス界最大の大会でメインに立つには特筆すべき実績を残せず、期待感も集められなかったことは本人も認めざるを得ないだろう。
とはいえ、大阪大会終了時点で団体内に海野以外の候補がいなかったのは事実だ。近年のメインイベンターと比較すれば実績やネームバリューで劣ることは否定できないが、そもそもそのレスラーらが多数退団した現在の新日本においては、ニュースターの誕生が急務。団体が海野を大抜てきしたのは必然だったといえる。
オカダ・カズチカ以降、20代でドームのメインを務めた日本人レスラーはいない。そのオカダは今年1月の退団時に「僕がいなくなったから席が空いたとかじゃなくて、確実に言えるのはピンチだよって。次の世代が『よし、これはチャンスだ』と思うのは間違いだと思う。そこを勘違いしてない人が上がってくる」と予言。今の海野は、レスラー人生最大のチャンスにして、ピンチを迎えているのかもしれない。
「こういう状況になって精神的にも鍛えられてるし、この経験を糧に絶対大きくなってやるって思ってます。2025年の東京ドームだけを見て言われてしまっているけど、新日本プロレスを5年後、10年後に振り返った時、これが吉と出るのか凶と出るのかは自分にかかってるという使命感はあります。全部背負ってドームのメインに立ってやるって強い気持ちを持ってます」(海野)
ブーイングが、ある意味でトップレスラーになるための通過儀礼であることは、団体の歴史が証明している。憧れ続けた夢舞台で、この逆風をどう変化させるのか、海野翔太というレスラーの真価が問われている。(プロレス担当・岡本佑介)