弁護士の野村修也氏が26日「X」(旧ツイッター)を更新。兵庫県の斎藤元彦知事の公職選挙法違反の疑惑について、自身の見解をつづった。
兵庫県知事選後、PR会社の女性社長がnoteで斎藤知事の選挙戦について投稿。その中で、公職選挙法違反に当たる可能性が事案があるとして、騒ぎになっている。特に問題となっているのがSNSでのPR活動で、これがPR会社が主体的に行っていた場合、公選法違反になる可能性があるという。またボランティアであった場合でも「違法な寄付行為にあたるのではないか」との指摘も出ている。
野村氏は、まず斎藤氏側がPR会社に支払ったとされる70万円について「斎藤知事のPR会社社長への支払問題について。選挙前の立候補準備行為(立候補のための情勢分析やポスター・ウエブ等といった公選法上使用が認められている文書図画の事前制作など)に対価を支払うことは適法。支払われた70万円は立候補準備行為の対価として常識的な金額なので、選挙期間中の選挙運動の対価を先払いしていたとは認定できず、運動員に対する買収問題は生じない」と指摘。
また「理論上は、事前収賄(当選した暁に仕事を発注する等の約束の下で、無償の役務提供が行われていた事案)が成立する余地はあるが、これまでに出てきている事実関係からそれを疑うのは、悪意に満ちた憶測の域を出ないだろう」とこれまで出てきた事実関係から斎藤氏側には問題ない、と見ている。
続けて「残る問題は、無償の役務提供(ボランティア)が①公選法199条1項で禁じられている請負業者等の寄附に該当するかという問題と、②政治資金規正法21条1項で禁じられている公職の候補者に対する『会社の』寄付に該当するかという問題」と現状の問題点をあげた。
現在問題視されているひとつがPR会社と兵庫県の関係。PR会社が兵庫県と契約を結んでいた場合、利益を伴う関係となる可能性も指摘されているが「①については、選挙期間中に、本件PR会社や社長個人が兵庫県と『請負その他特別の利益を伴う契約』を結んでいたかが問題となる。過去に結んでいたかどうかは関係ない。仮に社長個人が選挙期間中も兵庫県の審議会委員に就任していたとしても、これは委任契約であって請負契約ではなく、また、報酬は日当1万2500円とのことなので、交通費や会議日や事前説明等の時間に本業を離れることの機会損失を考えると『特別の利益を伴う契約』とは言えないだろう」と個人的な委任契約なら、言われているような疑惑に当たらないとしている。
その上で「したがって、争点は、選挙期間中に、PR会社が兵庫県の請負業者だったか否かと、今回の選挙で行われていたボランティア活動が『会社による寄附』と認定されるか否かの2点に絞られることになる」と、PR会社が請負業者だったのか、SNSでの活動がボランティアだった場合「寄付行為」にあたるかどうかが今後の問題点になると指摘。
続けて「②についても、今回の選挙で行われていたボランティア活動が『会社による寄附』と認定されるかどうかによって結論が変わってくる。TVでは、いろいろな憶測が飛び交っているようだが、論点はかなり絞られているのだから、過大な攻撃も過少な評価も回避しながら、事実に即して冷静に議論することが肝要だと思う」と提言している。
さらに「今回の件で明らかになっているように、公職選挙法の規制はネット時代の選挙運動に即しておらず、時代遅れと言わざるを得ない。お金持ちだけが優秀なネットPR業者を雇えるのは問題だとしても、選挙期間中のウエブ活動の支援を全て無償にするのはどうかと思う。車上運動員(いわゆるウグイス嬢)と同様の規制を検討すべき時期に来ているのではないだろうか」と公職選挙法が時代に則していないとしている。