NPBアワーズが26日に東京都内で行われ、ソフトバンク・近藤健介外野手(31)がパ・リーグMVPを受賞した。プロ11年目で手にした自身初の最高勲章。「まさかプロに入る時にこういう賞をいただけるとは思ってもいなかった。この賞を獲ったからには、より精進しなければならない」とさらなる進化を誓った。
今季は129試合に出場して打率3割1分4厘、19本塁打、72打点、出塁率4割3分9厘をマーク。リーグ唯一の打率3割超えで、首位打者と最高出塁率のタイトルを獲得した。
受賞の最大理由は、チームの精神的支柱・柳田が負傷離脱し、不動の4番・山川が極度の不振に陥った6月に、孤軍奮闘の活躍で窮地を救った点に尽きる。月間打率4割1分3厘、7本塁打、23打点の固め打ちで打線をけん引。チームの6月戦績は17勝5敗1分け、月別最高の勝率7割7分3厘だった。選手たちの中にあった「柳田不在」の動揺を打ち消し、勇気を与える獅子奮迅のパフォーマンスは紛れもなく今季のハイライトだった。
それでも本人に満足感はない。「最後、優勝がかかる大事な時期にケガをして、シーズンが終わった。日本一にもなれなかった。個人的には悔しいシーズンだったので、来年は晴らしたい」。一昨年オフにFA加入。2年連続の全試合出場に強いこだわりを持っていた。常勝再建を目指すホークスにあって、絶対的主力がどんな時もグラウンドに立ち続けるチーム理念を体現できなかった心残りがあったからだ。
9月16日のオリックス戦で右足首を捻挫。診断は「全治3か月」だった。翌日、思わぬ人物から着信が入った。背筋を正して取った電話の主は、尊敬する長谷川勇也氏(現R&Dスタッフ)。2013年にシーズン198安打で首位打者を獲得した偉大なOBは、その翌年に負った右足首の負傷を押して試合に出続けたことで悲運の野球人生を歩んだ。
「長谷川さんだからこその助言があった」(近藤)。10月16日のCSファイナル初戦に「5番・指名打者」で戦列復帰。もちろん助言をもとに慎重を期した。ただ、1か月で戦場に戻る「1択」しか、選択肢は用意していなかった。
数字だけでは測れない選手の価値がある。身近にいる仲間から寄せられる「信頼」ほど尊いものはない。取るべくして取ったMVPだった。