オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第215回は「おはんば」だ。
山に出る女の妖怪である。老婆というわけではなく、髪の毛が傷んではいるが、中年女性のようである。
この妖怪は、窓から姿を現すだけの妖怪であるが、それ以外は何をするのか分かっていない。
「おはんば」とは、山小屋の窓にこの妖怪が出現した時に、目撃者が思わず叫んでしまった呼び名である。目撃者はなぜこの言葉を叫んでしまったのか、自分でも分からないという。
だから、ルーツや語源ははっきりしない。「やまんば」という妖怪の名称と酷似しているが、関連ははっきりしない。
山の神=女の神という考え方があるが、女神が零落したものであろうか。名称の「お」という言葉は、小さいとかランクが下だとか、下位の意味を指している。そういった意味ではやまんばになりきれていない、若い妖怪を指す言葉であろうか。ママに対するチーママみたいなものかもしれない。
となると、やまんばという妖怪は、おはんばから出世魚のごとく成長して、やまんばになるのであろうか。
それとも、名前に含まれる「はんば」という言葉が示す通り、山の作業員が働いていたため、飯場=ハンバの女性従業員という意味であろうか。
そういった場合、必ず悲劇的な伝説が残されている。北海道での「泣き木伝説」にあるように、飯場で労働する女性が男性従業員たちから不当行為を受けて、首をつって亡くなってしまい、それ以来、怨念が木にしがみついてしまったというものである。
おはんばも同じような類いであろうか。山には、不思議な妖怪が多数生息しているものだ。