【宮崎祐樹連載 オリのゴリBsを知り過ぎた男(22)】プロ1年目が終わりオフシーズンに入るころでした。ルーキーイヤーだった2011年には一軍出場ゼロの僕に、センターのレギュラーだった坂口智隆さんが自主トレに誘ってくれました。
僕は二軍で、坂口さんは最多安打のタイトルを獲得したシーズンです。2月のキャンプで食事に誘っていただいてはいましたが、そこからはほぼ半年くらい接点がありませんでした。
それでも、何かのご縁だと思うんですが、球団行事か何かの時に「お久しぶりです」とあいさつしたところ、一緒に自主トレをさせてもらえることになりました。
一緒に練習して守備、走塁、打撃、野球全体などなど、いろいろなことを学ばせてもらいました。そんな中で坂口さんから言われた印象的なことがありました。
当時、僕も坂口さんもポジションは外野です。担当コーチは一塁ベースコーチを務められていた佐竹学外野守備走塁コーチでした。1年目の春季、秋季キャンプの時もそうだったんですが、僕は佐竹さんと何となく馬が合わないというか親しみを持って接することができませんでした。僕は大学まで捕手で社会人から外野です。まだ経験が浅いので、質問したいこともたくさんありました。でも、佐竹さんは僕の感覚では全然、教えてくれないコーチだったんです。
主力の坂口さんたちにはすごくフランクに接しているのに…。僕は嫌われているのかなと思っていたというより、もう僕が佐竹さんのことを嫌いでした。僕に対してはムスッとしている感じで、何なんだろうなこの人って感情でした。
具体的にこういうプレーの時はこういう重心のバランスで、とかではなく「はいダメ。全然、できてないヘタクソ」みたいな感じです。いつしか、こちらからも話しかけづらくなっていましたし、こんな教えてくれないコーチ意味ないやんとまで心の中で思っていました。
そういう相談を坂口さんにポロッと愚痴ってしまった時があったんです。でも、即答で「それはお前が間違ってる」と否定されてしまいました。当時の自分は何が間違ってるんだ?と思ってしまいましたが、坂口さんの言葉の真意に触れて考え方が変わりました。
「コーチを変えるのはお前自身やで。練習の時、心から『お願いします』って声出せてる? 精一杯の大きい声で言えてる? ノックの打球を本当に全力で追ってるか? ふてくされた態度、取ってないか? 佐竹さんが宮崎には真剣に教えたいと思うような態度でお前自身が練習に臨めているか?」
面と向かってそう言われた時、確かにできてないなと思いました。もちろん、練習は真面目にやってはいましたが、そんなのは大前提です。ただ、これから自分の居場所を奪い取らないといけない若手の立場で、練習に臨む姿勢が甘かったなという事実を、坂口さんの言葉でまざまざと気付かされました。
僕自身に佐竹さんに対しての不満がどっかにあるから、態度にも出ていたんだと思います。ホンマや。坂口さんの言う通りやん。俺、ちゃんとせなあかんやんと心底、思いました。
次の練習の時から態度を改めました。そうすると…やはり伝わるものがありました。