【宮崎祐樹連載 オリのゴリBsを知り過ぎた男(23)】若かりし日の僕は担当コーチである佐竹学外野守備走塁コーチのことが、苦手で仕方ありませんでした。何だったら嫌いでした。何も教えてくれないし、こんなのコーチとして意味ないじゃんくらいに思ってしまっていました。ところがです。そういったグチを当時のセンターのレギュラー・坂口智隆さんに漏らしたところ全否定されてしまったんです。
心の中に「なんで? なぜ同調してくれないの」という反発心がありました。それでも、坂口さんの言葉を聞いて僕はハッとなりました。「コーチを変えるのはお前自身やで」。つまり、僕の練習態度がプロの水準に達してなかったにもかかわらず、相手にしてもらえないコーチを逆恨みしている状態であることに気付けていなかったんです。
坂口さんの言葉に接して、練習に対する姿勢を真剣に改めました。外野ノックを捕球する練習でも、全力でゲームスピードで打球を追いかけました。それでも取れなかったら、元の守備位置まで全力で戻って「佐竹さん、もう一丁!」とノックのおかわりを要求しました。今思えば若手として当たり前のことなんですけどね。
そうすると、いつもは相手をしてくれない佐竹コーチの方から僕に声をかけてこられました。「どうしたの今日? なんかの罰ゲームなの?」って。僕は「いやいや違うんです。ちょっと自分で練習に対する姿勢を変えようと思って」という話をさせてもらいました。
すると佐竹さんは「大事だよ。そういうのって」とボソッと話されたのを覚えています。それからです。教えてほしくても相手にしてくれなかった佐竹さんが、もう付きっ切りで外野手としての引き出し、ノウハウを伝授してくれました。
何だよ、この人、こういう言い方ムカつくとか思ってしまうこともいっぱいありました。でも、僕が態度を改めることにより、佐竹さんは丁寧に細かいことまで外野手のイロハを教えてくれるようになりました。まさに坂口さんの言葉ですよ。「コーチを変えるのはお前自身やで」。嫌いとまで思ってしまっていた佐竹コーチですが、今は本当に感謝しかありません。
それで、現役7年目くらいのころですかね。佐竹さんから衝撃のひと言をいただきました。「俺、キミの担当スカウトなんだからね。だから、頑張って」。え? 僕の担当スカウトは牧田さんですよ。それも事実なんですが、本当は一緒に佐竹さんもサブ担当として2010年のアマ選手の僕を見てくれていたんです。
佐竹さんは11年から配置転換でコーチに就任することも決まっていました。いろんな事情もあって、スカウトとしては前面に出ないようにしていたんだろうと思います。
若手時代の僕の佐竹さんに対する態度、マジで悔い改めたいわと後悔しましたね。僕をプロの世界に導いてくれた人なのに、なんて態度を取ってしまっていたのか。本当にごめんなさいとしか言えなかったですね。
坂口さんからの言葉がなければ、僕の考え方は子供のままだったと思うんです。気付かせてくれた先輩にも感謝ですし、僕をスカウトしてくれて、担当コーチとして野球の技術も伝授してくれた佐竹さんには感謝してもし切れないです。