【昭和90年代の人々】かつて週末の朝を彩っていたアニメや、かわいい動物がいきいきと活躍する名作アニメ…。そんな70~90年代のアニメーションを再現した動画で話題を集めるアニメーター集団「NOSTALOOK」をご存じだろうか。数々の有名アーティストのMV制作も担当するNOSTALOOKのメンバーに、〝当時らしさ〟を表現するための工夫や、作品に対する反響について語ってもらった。
メンバー全員が90年代生まれというNOSTALOOK。90年代のアニメはもちろん、80年代の作品も再放送等で触れてきたというグループが懐かしのアニメに注目したきっかけは、年下世代の反応だった。
「80年代のセルアニメーションが、私たちより若い世代からSNS上で高く評価されているのを見て、改めてその魅力やクオリティーの高さに気づかされました。その中で自分たちが慣れ親しんできた、セルアニメの新作がもう見られないことを悲しく感じまして。アニメーション制作の経験があるメンバーで集まり、映像表現としてのセルアニメに挑戦したいと思ったのがきっかけです」
現在は25歳~34歳をフォロワーのボリュームゾーンとしつつ、10代のような昭和~平成初期を経験していない世代からの人気も獲得。さらに国外ユーザーからも支持を得られているという。
そんなNOSTALOOKのオリジナルアニメでは「セーラームーン」の影響も感じられる。
「もはや記憶に刷り込まれているといいますか、意識しなくても寄ってしまう部分はありますので…。その分他の時代の有名作品もチェックして、作風に幅を持たせられるように努力しています」
令和を生きる他の昭和系クリエーターと同様に、NOSTALOOKもデジタルで当時の映像を再現している。
「分かりやすく画面を4:3のサイズにしたり、セルについたゴミを入れたりしていますし、セルアニメ特有の光の表現も意識しています。当時のアニメはほぼデジタル処理を使わず、実物の光源を置いて撮影していたので、独特の輝きがあるんです。その明るさや温かさも何とか再現できるよう、毎回試行錯誤しています」と当時の製作背景にも配慮を欠かさない。
加えて演出面でも当時の工夫を尊重する。現在はtimelesz、デュア・リパ、優里等、有名アーティストのミュージックビデオも数多く担当しているが、その際にアニメ「うる星やつら」「めぞん一刻」等で、オープニング・エンディングを手がけたアニメーター・南家こうじ氏の演出が参考になったとメンバーは明かす。
「特に『主人公たちが歩き続ける』といったような〝リピート〟を使った演出は、少ない手間に対して映像の見栄えの良さが非常に良いんですね。尺を持たせられる上に音楽にも合わせられるという意味でも、究極の演出だと思っています」
さらに今年はHTB制作のバラエティー番組「水曜どうでしょう」のディレクター陣(藤村忠寿氏・嬉野雅道氏)に向けた昭和風動画「水曜いかがでしょう」のオープニングアニメも担当した。これまで再現した年代よりも古い、60年代風のアニメ制作には苦労もあったと語る。
「普段取り上げている80年代は当時の生活がイメージしやすいのですが、60年代はまだ各家庭に行き渡っていない家電があったり、その時代には存在しない日用品があったりしますので…。かなり当時の状況を勉強することになりました」
労力がかかるとはいえ、発信してきた動画・MVに高評価が寄せられていることには素直に感謝しているという。
「意図していなかった考察コメントをいただくこともあり、楽しく拝見しています。『丘の上のチャーリー』という架空作品の予告編には『〇〇のシーンは泣けた』『家族で見ていて、ぬいぐるみの取り合いになった』といったような、まるで当時視聴していたかのようなコメントをいただきました。またSNSのフォロワーからは、以前我々がデザインしたCDジャケットを基に、お子さんが描き上げたという直筆のイラストをDMでいただいたこともあります。老若男女問わず楽しんでいただけていることは本当にうれしいですね」
これからも動画・静止画に関わらず、あらゆる形で〝あの頃〟のアニメ文化を広めていきたいと語るメンバー。
「『水曜いかがでしょう』で楽しんでいただいた60年代のデフォルメされたアニメもどんどんやっていきたいですし、80年代のセルアニメ全盛期の、〝ゴリゴリとした作画〟にも挑戦していきたいです」と意気込んだ。
あらゆる世代を「懐かしさ」満載の映像でくすぐり続けるNOSTALOOKは、さらなる展開に向けて今日も筆を走らせている。
のすたるっく 70年代から90年代にかけてのアニメーションを再現した動画で話題を集める「アニメーションアートプロジェクト」。架空のアニメ作品をイメージしたオリジナル動画を投稿する他、現在は「timelesz」「デュア・リパ」「優里」等、有名アーティストのMV制作も担当する。