先月、ギャラリーの壁にダクトテープでバナナを貼り付けたアート作品「コメディアン」がサザビーズのオークションで620万ドル(当時のレートで約9億6000万円)で落札され話題になったが、そのバナナを販売したニューヨークの果物売りが「35セント(約52円)しかもらえなかった」と涙している。米ニューヨーク・ポストが先日、報じた。
アッパー・イースト・サイドの果物売りのシャー・アラムさん(74)は最近、52円で売ったバナナがイタリア人芸術家マウリツィオ・カテランの作品「コメディアン」に使われたことを知った。
「コメディアン」はサザビーズのギャラリーの壁にバナナを貼り付けたもので、アラムさんはサザビーズのオークションハウスの外に屋台を出している。
米紙ニューヨーク・タイムズが先日、作品に使われたバナナは、アラムさんの屋台から購入されたものだと報じた。そこで「コメディアン」を落札した中国の暗号通貨会社創設者ジャスティン・サン氏は、Xへの投稿で「アラムさんからバナナ10万本を購入する」と申し出た。そのことをニューヨーク・ポスト紙がアラムさんに伝えたが、アラムさんは申し出のことを知らなかったようだ。
時給12ドルで1日12時間働いているバングラデシュ移民のアラムさんは英語をあまり話せないという。ニューヨーク・ポスト紙に対し「私は35セントもらった。別の人は600万ドルもらった。それは私の想像を超えている」と語った。
また、アラムさんの屋台で買い物をする顧客フアン・ポサダさんは「ニューヨーク市の200年の歴史の中で、これは私が今まで見た中で最も不条理なことだ」と話している。