今年の栄冠は誰の手に――。51回目を迎える「東京スポーツ新聞社制定2024プロレス大賞supported byにしたんクリニック」が11日に発表される。10日の選考委員会を前に、4年連続で特別選考委員を務める鉄人・小橋建太(57)が、今年のマット界を振り返る。業界の絶対的エースだったオカダ・カズチカが抜け、「大混戦」となった賞取りレース。鉄人の口からは、バラエティーに富んだ名前が挙がった。
今年のプロレス大賞のテーマは、オカダ・カズチカがいなくなった混沌のマット界がどうなったか?ということじゃないかな。「この人が!」という中心選手はまだ誕生してないかもしれないけど、「俺がやるんだ」「俺が団体を引っ張るんだ」という気概を持った選手は出てきたと感じる。
まず最優秀選手賞(MVP)を争うのは、新日本プロレスでは現IWGP世界ヘビー級王者ザック・セイバーJr.だね。ザックが取れば(2002年度の)ボブ・サップ以来の外国人選手のMVP誕生だ。ただ1年を通じた活躍という部分で、議論になると思う。
全日本プロレスは斉藤ブラザーズ(ジュン&レイ)だね。昨年、地元・宮城のテレビ局で人気が出て、今年は全国放送の地上波にも多く出演していた。新人賞を取った昨年より試合も良くなっている。開催中の「世界最強タッグ決定リーグ戦」でも連勝を続けている(1日現在)から、最優秀タッグ賞との2冠もあるかもね。
ノアは清宮海斗がGHCヘビー級王座を防衛し続けた。大きい会場ばかりじゃないから目立ってない部分もあるけど、デビュー9年目でコンスタントに結果を残すのは難しいことだよ。
個人賞(殊勲賞、敢闘賞、技能賞)では、新日本の「NEW JAPAN CUP」を優勝した辻陽太。あの世代では海野翔太が最初は一歩抜きんでていたけど、辻くんがガーっときた印象だ。
あとエル・デスペラード。「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」を優勝してIWGPジュニア王座を取ったし、他団体にも出て集客させる力がすごい。ケガで4か月休んだというのがあるけど、昨年も活躍しているから賞に絡んできてほしい。DOUKIもそうだし、鷹木信悟も新日本の中心選手として頑張っていた。高橋ヒロムも藤波辰爾さんとも試合をやって、話題豊富だったね。
DDTではKONOSUKE TAKESHITA(竹下幸之介)だね。彼はいいものを持っている。DDTは上野勇希や、MAOのように可能性を持っている選手がいるね。KO―D無差別級王座を巻いた青木真也は対応力がすごいよ。あと鈴木みのるはいろいろな団体で活躍したし、AEWでクリス・ジェリコと戦ったり海外でも引っ張りだこだった。年齢的に俺と1つしか違わないのに、活躍ぶりがすごい。
女子プロレスはこれまでスターダム1強だったところに、マリーゴールドができたことで他の選手が出てきた。女子プロ大賞は5年連続スターダムが取ってきたけど、今年は変わる可能性がある。
Sareeeは、あの小さい体(158センチ、60キロ)でもガンガンいくし、試合自体も面白い。WWEを経験したことで、ひと皮むけた感じがするね。あとウナギ・サヤカも昨年に続き話題を出していた。来年も両国国技館大会を開催すると発表したし、社会における女性の活躍を象徴している存在だよね。
そして来年4月に引退する里村明衣子。(6月の小橋プロデュース興行)「Fortune Dream 9」(後楽園)で日本マットに復帰したけど、体から発するオーラ、目力、緊張感ある試合は男子顔負けだったよ。
スターダムではIWGP女子王座の防衛をV8まで伸ばした岩谷麻優だね。舞華は昨年12月から半年間はワールド王者として激動の団体を支えた。「5★STAR GP」全勝優勝からベルトを取り戻せていたら、有力候補になったと思う。ワンダー王座とセンダイガールズのワールド王座を巻いた安納サオリも候補だね。こうして見ても女子プロ大賞は候補を絞り切れない。5年ぶりに岩谷対Sareeeの可能性もあるから楽しみだね。
海外に多くの選手が行ってしまって、業界が下がっているかもしれない。だけど日本のプロレスは素晴らしいと思うので、ぜひこのプロレス大賞がいい起爆剤になればいいね。毎年新しいスターが出てくれば、今後のプロレス界が楽しみだから。