俳優の緒形直人が現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説「おむすび」に靴職人・渡辺孝雄として出演中だ。
同ドラマは、福岡県糸島での生活を経て、引っ越した兵庫県で神戸栄養専門学校に通うヒロイン・結が紡ぐ青春の日々を描く。
緒形が演じるのは靴職人。妻と娘を亡くし、商店街の中で孤立しているという役どころをこのほど明かした。
「不幸な役どころですね。孝雄は母子家庭で育ち、弟のために学校を辞め、家庭を支えていた苦労人という設定です。結婚し、子供が生まれ、ようやく幸せというものを感じていたところ、母を亡くし、妻を亡くし、男手ひとつで懸命に一人娘を育ててきた。そうした状況で阪神・淡路大震災で被災し、すべてを失って12年間、まだ一歩も前に進めていない男です」
それでも緒形は「こういう人は、地震大国である日本にはおそらく、たくさんいるのでしょう。僕自身だったとしても、ふさぎ込んでいたと思います」と推察。「物語が進むにつれて、自分の不幸にとらわれていた孝雄が少しずつ前を向く様子が描かれていきます」と説明した。
阪神・淡路大震災発生後、兵庫で社会貢献活動を続けてきた俳優・堀内正美から「親を亡くすことは過去を失くすこと。恋人や妻を亡くすことは今を失くすこと。子を亡くすことは明日を失くすこと」ということを教えてもらったという。実際に共演する場面もある。
最後に「心の復興は人それぞれ違います。阪神・淡路大震災だけでなく地震大国である日本で、こうした人が現実にいることを絶対に忘れないでほしい。そういった意味でもしっかりと悲しむ、しっかりつらい顔をした演技を朝から届けていきたいですね」と意気込みを語った。