選挙とSNSを巡る議論が本格化しそうだ。兵庫県知事選で斎藤元彦知事再選の原動力となったのがSNSだった。広報全般を担ったと主張するPR会社代表によるSNS戦略だけでなく、NHK党立花孝志氏の兵庫県政を巡る暴露情報もSNSで拡散された。これにより斎藤フィーバーとなった一方で、選挙中のSNS規制の必要性を指摘する声も上がっている。一体どうしたらいいのか。
公職選挙法違反の疑いで大学教授らに告発されたPR会社代表による「note」にはSNS戦略について記述があった。現在は削除されているが、SNS運用フェーズを示した表があったのだ。
10月1日から11月17日の投開票日までを「フェーズ1:種まき」「フェーズ2:育成」「フェーズ3:収穫」の3つに分けて計画的にSNSを運用していたと思わせる内容だった。これには斎藤フィーバーにわいたSNSユーザーも「兵庫県民は野菜かよ」と困惑の声を上げていた。
PR会社代表のSNS戦略以外にも立花氏が斎藤氏を後押しする目的で知事選に出馬したことも斎藤氏の再選につながった。斎藤氏のパワハラやおねだり疑惑の裏側について、真偽はともかく暴露した内容がSNSで広まって斎藤氏支持のうねりを作り出していた。
SNSによって選挙の流れができたことに違和感を訴える人もいる。元宮崎県知事の東国原英夫氏はテレビ番組で「今後はSNSも公職選挙法の対象にする必要がある」と発言。タレントからもSNS規制に言及する声が上がった。
さっそく国会でも話題になっている。立憲民主党の辻元清美参院議員は選挙においてSNSで偽情報が拡散されている現状を指摘。公選法では候補者の偽情報を公表することが禁じられているとした上で「SNSへの偽情報の投稿も該当しますか」と村上誠一郎総務相に問うた。村上氏は「公選法が定める虚偽事項公表罪の対象になる」との見解を示した。
より具体的なSNS規制の話が永田町で始まるかもしれない。一方で法曹関係者からは「SNS規制は難しいでしょう」という意見も出ている。
公選法は分かりにくく候補者や陣営も何ができて何がダメかを完璧には把握しづらい。「選挙プランナーやコンサルが選挙で果たしてきた役割がある。それは選挙というのはこういうふうにやるんですよ、という候補者に対する基本的な指導です」(同)
ルールが分かっていないとメチャメチャな選挙戦になってしまう。「SNSの使い方もそうです。SNSを使うなではなく、選挙におけるSNSの使い方について専門家のちゃんとした指導やアドバイスはむしろあるべきです。こうした指導は公費負担でもいいくらい。ネットに疎い人が不利にもならないでしょう」(同)
SNSを規制するのではなく、候補者が選挙におけるSNSの使い方を公費で学ぶ方が結果として健全な選挙になるのではないかというわけだ。
ネット社会の現代でSNS規制は現実的ではないかもしれない。