ロッテは11日、ソフトバンクから国内フリーエージェント(FA)宣言した石川柊太投手(32)の獲得を正式に発表した。先発、中継ぎで実績豊富な通算56勝右腕を巡っては残留を求めていたソフトバンクに加え、オリックス、巨人、ヤクルトが獲得に乗り出し、5球団による争奪戦に発展。妻でタレント(元SKE48)の大場美奈さんも同席した各球団との1回目交渉を経て、ロッテとは再交渉の末に最終的に3年総額6億円規模の契約でまとまったとみられる。
決断した9日は、ちょうど1年前に美奈さんと結婚式を挙げた記念日だった。5球団からラブコールを受け、1つに絞る過程は想像以上に苦労。妻とともに交渉の席につき、肌感覚で「熱」を感じたからこそたどり着いた答えだった。
「交渉の席で吉井監督からいろんな話をしてもらいました。『ずっと見てたよ』って言っていただいて、僕の投球を以前から熱心に見ていてくださったことが会話から伝わり、必要としてもらっていることを強く感じました。フロントの熱意と現場の熱意が最も一致していると感じたのが、ロッテを選んだ決め手だったのかなと思います」
当初の想定よりも争奪戦は長期化した。誠意を受けた各球団との1回目交渉を時間をかけて振り返り、熟考を重ねた結果の縁だった。
石川は2013年に育成ドラフト1位でソフトバンクに入団。20年に最多勝と最高勝率の2冠に輝き、昨季はノーヒットノーランを達成するなど主力としてホークスを支えてきた。入団の経緯と成長過程からもチームへの愛着は強かった。
「福岡という街が本当に大好きでした。ファンの方に支えられたのは言うまでもありません。ホークスファンはもちろん温かいですが、厳しかったです。でも、それは当然。ホークスは一番に勝つことを求められる球団ですから。チーム内競争を含めて、なかなかできない経験をさせてもらいました」
不甲斐ない投球をすれば辛辣な声を浴び、激しい競争の中でポジションを失うことも少なくなかった。たくましく期待に応えようと腕を振り続けた結果が成長につながった。ゆえに感謝の思いは人一倍だ。
千賀(メッツ)や甲斐といった同じ育成出身の選手らと刺激し合いながら立身出世を果たした。
「意識の高い選手たちに出会えたのもホークスだから。強いホークスにいたから、選手としてたくましく成長できたことは間違いありません。たくさんの重圧を感じながらプレーできた経験は、これからの野球人生に必ず生きると思っています」
今季4年ぶりにパの覇権を奪取したホークスは強大な敵となる。
「指標的にも日本で一番のチーム。本当にすごい打線。『お手柔らかにお願いします』と言って、こっちは全力でいかないと倒せない」
新たな野球人生を切り開くロッテの石川柊太。「この先も、すべては自分次第。前向きな重圧を感じています」。真っすぐな言葉でよどみなく語る姿からは、強い覚悟がにじんだ。(金額は推定)