師弟の情愛も葛藤も恩讐(おんしゅう)のかなたに――。阪神・森下翔太外野手(24)が12日に兵庫・西宮市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、4000万円アップの年俸7800万円でサインした。大幅増俸を勝ち取り、会見では「球団からも評価をしてもらえた」と笑み。時に厳しい愛のムチを放ってきた岡田彰布前監督(67=オーナー付顧問)の英才教育も実り、プロ2年目の進化を遂げた虎の背番号1は胸の内に去来する本音も明かした。
今季の森下は129試合に出場し打率2割7分5厘、16本塁打、73打点と打撃主要3部門でルーキーイヤーの昨季を大きく上回る数字をマーク。〝2年目のジンクス〟をほとんど感じさせなかった背景について問われると「オフに自分を突き詰めたことを貫けた。プロ3年目になる来季が楽しみ」と胸を張った。
昨オフは打撃スタイルや用具も大きく変えて新シーズンに臨んだが、岡田前監督からは「ピートローズのバット使ってどうするんや」「ホームランばっか狙いよって」など、春から苦言の連打を浴び続けた。前半戦は打率2割台前半と打棒も低迷。業を煮やした指揮官から異例の直接指導も受けたが、7月には無念のファーム降格を命じられた。
森下は第2次岡田政権チルドレンの筆頭格。期待値の高さもあり40歳以上、年齢が離れた指揮官からの風当たりは強かった。それでも自身の信じる打撃スタイルを貫いて二軍からはい上がってきた7月後半以降は、打率3割を優に超えるハイアベレージをマーク。自身の真価をバットで証明してみせた。
主力打者陣がそろって沈黙したCSでも、孤軍奮闘の活躍で身上とする勝負強さをいかんなく発揮。岡田前監督にも「(結果を残せたのはこれまで厳しく)言うてきたヤツだけやろ。野放しにしたら大変やもんな」「ちゃんと練習して、ちゃんと自分の打ち方が分かっているヤツが大事な場面で一本打てるんよ」とその成長を認めさせた。
その岡田前監督も、今季の巨人戦で森下が顔面付近に連続してブラッシュボールを投げられた際には「情けないのう、巨人もな。伝統の一戦にならんよ」と相手が他球団バッテリーであろうと苦言を呈することも辞さなかった。厳しさも全て、森下への愛情とこれからのプロ野球人生を思いやってのことだったのだろう。今季限りでタテジマを脱いだ前指揮官に「伝えようとしていることの意味は分かった。監督という立場だったら難しい部分もある。感謝しています」と森下は語った。
岡田前監督からの〝教え〟を胸に刻み、プロ3年目のさらなる飛躍を目指す。
=金額は推定=