日本ハムの新庄剛志監督(52)が、2022年までチームの本拠地だった札幌ドーム(現・大和ハウス プレミストドーム)の〝有効活用〟に意欲をのぞかせている。日本ハムは現在、千葉・鎌ケ谷に球団二軍施設を保有しているが、20年以上が経過した球場や室内練習場、選手寮の老朽化が深刻になりつつある。しかも北海道と千葉を拠点にしているため一、二軍選手の移動が容易ではない。そこで指揮官は慢性的な赤字が続く前本拠地に白羽の矢を立てて、妙案を投げかけた。その中身とは――。
さまざまな諸問題の解決と環境を改善すべく、日本ハム側は数年前から二軍施設の北海道移転を検討中だ。現時点で札幌を始め恵庭、千歳、江別、苫小牧などが候補地に挙げられている。だが、いずれの都市に移転した場合でも自治体、球団の金銭的な負担がのしかかる。
そこで新庄監督は「私見」として「それなら札幌ドームが(移転先として)一番いいのでは」と旧本拠地の再利用を提案していきたいという。
指揮官はその理由をこう語る。
「まず一番は屋根(ドーム)がありますし、鎌ケ谷の球場を改修、移転する金額ぐらいで地面(硬いグラウンド)を代えればいいんじゃないかなと。二軍が札幌ドームなら一、二軍の入れ替えもやりやすくなる。僕も午前中に二軍を見に行って、ナイターで一軍の采配もできるし。今年にしても(二軍から)選手を一軍に呼ぼうとしてもすぐに来れなかったりしたことがあったので」
さらに利点についても、こう続ける。
「そうなったら何が一番いいって、親子ゲームができるんですよ。屋根があるので雨天中止の心配がないですし、例えば調子が悪い選手が(二軍戦に出て)打ったりもできる。打たなくても(二軍戦で)ボールを見極めたりタイミングを取ったりもできるじゃないですか。それを(一軍に)持ってきてくれるだけでも全然違いますからね」
札幌ドームは日本ハムが本拠地をエスコンフィールド北海道に移転後、稼働率が急激に悪化。今年3月期の決算では純損益が約6億5000万円の赤字が明らかになるなど、経営難が続いている。赤字幅は今も拡大の一途をたどるため、ドーム側は今年7月に命名権を売却。4年およそ10億円で「大和ハウス プレミストドーム」に生まれ変わったが経営環境は依然として厳しい。仮に日本ハムの〝古巣復帰〟が実現すればドームを管理する札幌市、札幌ドームには朗報だろう。
ただ、札幌ドームと日本ハムは長年にわたり高額使用料等で折り合いが合わず「仲たがい」が続いた。その結果、球団側が23年に本拠地を北広島に移転した経緯がある。両者の深い溝を埋めるのは容易ではないが、新庄監督は現状を理解した上で〝雪解け〟を期待しながら、次のように持論を語る。
「もちろん札幌ドームへの移転というアイデアは自分の想像でしかない。でも、そういうアイデアを出すのも僕の仕事。(チームの)采配をするだけが僕の役目ではない。『いらんこと言うな』と言われるかもしれないですけど、いいんです。二軍の移転を本気で考えているんですから。球団と札幌ドーム(札幌市)の間にはいろいろあると思うんですが…仲良くならんかな、って(苦笑い)」
各方面の負担軽減や現場の利便性向上を考えれば、一考の余地がある新庄監督の「札幌ドーム再利用案」。実現までには課題が多いとはいえ、両者にとって悪い話ではない。その行方が注目される。