MLB移籍を目指す佐々木朗希投手(23)の大争奪戦にゴングが打ち鳴らされた。令和の怪物を巡る交渉が本格化し、12日(日本時間13日)までに「20球団以上」が関心を示した。来季から念願の米国でプレーすることは確実。かねて故障がちな耐久性について疑念を持たれてきたが、メジャーで大成するために新たに指摘されたクリアすべき“悪癖”とは――。
いよいよ“朗希狂騒曲”の幕開けだ。米テキサス州ダラスで開催されたウインターミーティングで、代理人のジョエル・ウルフ氏は「20球団以上」から接触があったことを明かし、すでに佐々木が米国入りしていることも示唆。獲得を希望する球団とは来週から面談を行う予定という。交渉期間は来年1月24日午前8時(同24日午後10時)までで、契約時期は各球団の国際ボーナスプールが2025年に切り替わる来年1月15日(同16日)以降となる見通しだ。
「25歳ルール」が適用され、最大でも750万ドル(約11億7000万円)と“激安”ではあるが、史上最年少の20歳5か月で完全試合を達成した右腕の素材に疑いの余地はない。MLB関係者も「彼はトップクラスの先発投手」「まだ耐久性に問題を抱えているが、故障さえなければ理想的な将来が約束されている」と絶賛。ロッテに在籍した5年間で実働は4シーズンで、規定投球回に一度も到達できなかったが「逆に言えば使い減りをしてない」(東海岸球団関係者)といった好意的な受け止めもある。
ただ、一部のMLB関係者はこんな新たな改善点も指摘した。
「彼は時折、マウンドでネガティブな感情をそのまま表現してしまうところがある。パーフェクトゲームを達成した年に審判とトラブルを起こしたように、感情のコントロール方法をもう少し学ぶ必要がある。AI審判がまだ導入されていない状況では、感情を持つ彼らを味方につけるのも投手の仕事のうち。思いのままに行動していては自分が損をしてしまう」
佐々木が完全試合を達成したのは22年4月10日のオリックス戦(ZOZOマリン)。その2週間後に行われた同24日の同戦(京セラ)で“事件”は起きた。カウント2―2から外角に投じた160キロの剛速球を「ボール」と判定され、不服そうな態度を示すと白井球審が憤慨。審判自らマウンドの佐々木に詰め寄る異例の騒動に発展した。
その後、同年の球宴では当時西武に所属していた山川(現ソフトバンク)が“フリップ芸”で「白井球審と仲直りして!」と佐々木をイジり「あれは朗希が悪いです。文句しか言われない人たちに文句言ったらいかんです」とたしなめたことも記憶に新しい。いずれにせよ、日本でも米国でも審判を敵に回してもメリットは何一つない。ましてや今後の主戦場はMLBだ。特に注目される日本の新人選手に対しては、“アク”が強いベテラン審判などから意地悪にも映る厳しい判定を下されてきた過去がある。
その点、佐々木はストライクやボール以外の判定でも味方の失策で露骨に顔をしかめたり、痛打された感情を抑えきれずにカバーリングを怠ってしまったこともあった。
もちろんドジャース・大谷のように常に周囲に思いやる行動をとったり、グラウンドに落ちているゴミまで拾う必要はない。審判も感情を持った人間。佐々木がメジャーの舞台で羽ばたくためにも、怒りの感情をコントロールする「アンガーマネジメント」も大事な要素となりそうだ。 (本紙取材班)