駆け引きが激化している。自民党、公明党、国民民主党の3党で年収103万円の壁引き上げを巡って協議が続いていたが、17日の会合はたった10分で打ち切りとなった。3党合意で178万円を目指すことで一致していただけに、国民民主党は煮え切らない自民党に堪忍袋の緒が切れた形。今後の国会はどうなってしまうのか。
年収103万円という数字は基礎控除48万円と給与所得控除55万円を足したもの。与党はこれまでの協議で1995年以降に食料や光熱費が上昇したことを踏まえて、それぞれ10万円ずつ引き上げる123万円を提案していた。
一方で、3党は11日に「国民民主党の主張する178万円を目指して、来年から引き上げる」という内容を含む合意書にサイン。それだけに国民民主党は新たな提案が自民党からなかったことで、協議開始早々に打ち切りを宣言したという。
国民民主党の玉木雄一郎衆院議員はX(旧ツイッター)で「この期に及んで、『グリーンはどこですか?』と聞いてくる自民党宮沢洋一税調会長。178万円に決まっています。温厚な我が党の古川元久税調会長も席を立ったようです」と投稿した。
〝グリーン〟とはゴルフのグリーンのことで、こうした比喩を使って宮沢氏は落としどころを探っていたとみられる。しかし、古川氏には通じなかったわけだ。
永田町関係者は「落としどころは段階的に178万円を目指して引き上げていくことになるのかなと思っていましたが、今回の協議ではそういう話にすらなりそうもないってことだったのでしょうか」と首をかしげた。
そもそも国民民主党がイケイケなのは10月の衆院選で28議席獲得と躍進してキャスティングボートを握ったからだ。自公は合わせて215議席と過半数233議席に満たない惨敗っぷり。現在、行われている臨時国会で補正予算案を通すためには国民民主党に頭を下げるしかなかった。
しかし、事情が少し変わりつつある。この日、与党にとって懸案だった補正予算案が参議院本会議で成立。自公と国民民主党だけでなく、日本維新の会も賛成に回っていた。「日本維新の会が補正予算に賛成を表明したのは衆議院での採決前でした。自公と教育無償化の方針で合意したことを受けての決定ですが、自公にとっては国民民主党以外に維新と協力するという選択肢ができたことにもなりました」(別の永田町関係者)
維新は衆院選で大敗と評価されたが、それでも38議席と国民民主党よりも多い。来年度予算案を通すにあたり、維新に接近するという手も自公にはある。だからこそ自公はこの日の協議で国民民主党に対して強気に出られたとの観測も広がっている。また、維新の創設者である橋下徹氏はこの日、Xで「維新が本予算に賛成すれば国民民主の主張は吹っ飛ぶ」とあおっていた。
もっとも石破内閣の今後が不安定なことには変わりない。頼みの維新は共同代表の前原誠司氏が外様なため党内をまとめ切れるかという不安がつきまとっているのだ。
石破氏が今後手を握るのは前原氏か、それともやはり玉木氏なのか。はたまた立憲民主党の野田佳彦代表なんてこともあったりして…。