ヘルスケアアプリは信用性なかったはずが…。カジノを含む統合型リゾート(IR)を巡る汚職事件で、有罪判決が出て、最高裁に上告中の秋元司元衆院議員に〝紀州のドン・ファン事件〟が後押しとなって、逆転判決の可能性が出てきた。
秋元氏は日本でのIR参入を目指す中国企業の元顧問側から現金などを受け取った収賄の罪などに問われ、一審、二審ともに懲役4年の判決が出て、上告している。一貫して無罪を主張しているが、最高裁の判断がいつ出てもおかしくない状況で、大きく局面が変わりかねないというのがドン・ファン事件の判決だ。
一審から秋元氏の弁護人を務めている〝無罪請負人〟こと弘中惇一郎弁護士は17日、秋元氏のセミナーに出席し、「和歌山の事件で無罪判決が出た。検察はヘルスケアアプリを有罪の証拠として利用したんです」と指摘した。
ドン・ファン事件で、検察は元妻の須藤早貴被告が野崎幸助さんを殺害したとする裏付けでiPhoneのヘルスケアアプリの記録を使用した。同アプリは歩数や走行距離などを自動的に記録し、健康管理をサポートする機能がある。須藤被告は犯行当日に1階と2階を7回行き来していたのは普段と違う行動だとして、証拠提出し、裁判所側も採用していたのだ。
秋元氏の事件でも現金300万円の受け取り場所を巡って、元顧問側は議員会館と証言したのに対し、秋元氏は受け取ったとされる時間帯は国交副大臣を務めていた国交省内にいて、iPhoneを机の上に置いていたことでヘルスケアアプリで移動記録がないことを証拠として、提出していた。ところが、裁判所側は「(記録は)信用できない」として、不採用とし、贈賄側の証言だけを採用した経緯がある。
「国交省にいたことを示す写真もあって、時計やiPhoneも映っている。議員会館に行くことはあり得ないのがヘルスケアアプリが明確に示しているが、裁判所は『ヘルスケアアプリがよく分からない、そんなものは信用できない』という理屈。ところが和歌山の事件で検察は有力な証拠として用いた」(弘中氏)
ドン・ファンの事件で裁判所は7回行き来していたとしても野崎さんの殺害と無関係の可能性があると結論付けたが、ヘルスケアアプリの記録は認定していた。秋元氏の事件でもヘルスケアアプリの記録を採用すべきとの主張で、弘中氏は「今、あきらめずにそういった問題点を網羅して、最高裁と戦っている」と話した。
秋元氏も「もらっていないものはもらっていないから、私は認めるわけにはいかない。こういった事実がしっかりと認められて、それが判決できる司法というものを作っていかなくてはいけない。新しい証拠があれば、裁判所に提出し、来年には決着をつけたい」と改めて、無罪を訴えた。