【取材の裏側 現場ノート】日本プロレスの祖・力道山や〝ミスタープロレス〟こと天龍源一郎など大相撲出身の名レスラーは多い。だが、最近は力士から転身するケースが減っている。
全日本プロレスの世界タッグ王者・斉藤ブラザーズ(ジュン&レイ=38)は2009年に出羽海部屋に入門して8年活躍した後、17年に廃業。21年6月9日の大森隆男&本田竜輝戦(後楽園ホール)で、ともに全日本デビューを果たした。
レスラーに転身した苦労を2人に聞くと、元幕下藤の海のジュンは「相撲とプロレスは全くの別物だし、プロレスを始めるとなったら体が動かせて、何でもできないといけない。(力士時代に)一番重い時は体重が150キロ以上あったけど体を一からつくり上げようと思って一度90キロ以下まで落とした」と力説。元三段目藤の花のレイも「2人とも一度60キロ近く体重を落としたし、俺は100キロぐらいまで落とした」。過酷な減量を経て、レスラー用に肉体改造を行ったという。
また土俵上での激しい攻防により体にダメージが蓄積されている力士は多い。ジュンは「正直(引退した力士から)プロレスをやってみたいという相談は何回か受けたことがある。でも、みんなヒザと首が悪くて。(レスラーは)スクワットとかも結構やらされるので」。レイも「今は力士が大型化しているし、それだけ体が大きいと負担も増える。ヒザを痛めている人は多い」と話すように、2人にとってもデビューするまでは苦難の道のりだった。
11日に発表された「東京スポーツ新聞社制定2024プロレス大賞supported byにしたんクリニック」では最優秀タッグ賞を満票で初受賞。王道マットでの活躍から人気レスラーとなった2人は、今でも本場所中に出羽海部屋の力士の取組を中心にチェックしているという。
ジュンは「最近は自分たち以外に元お相撲さんのプロレスラーが減っているし、増えてほしいな」。この発言にレイもうなずきながら「全日本プロレスのレスラーを連れて、相撲部屋に出稽古に行きたいぜ」と目標を口にした。その時はぜひ記者も取材で同行させていただきたい。
(大相撲担当・加田晃啓)