寒くなり、体の節々が痛いと感じている人もいるのではないだろうか。中でも、手足のしびれや痛みが気になっている人は、脊柱管狭窄症になっているかもしれない。脊柱管狭窄症とはいったいどんな疾患なのか。整形外科医の浅野健一郎先生に教えてもらおう。
――脊柱管狭窄症とは?
浅野医師(以下、浅野)脊柱管とは、背骨の中にあるトンネル状の神経の通り道です。人間は脳から手や足などにかけて神経がつながっています。脊柱管は非常に大事な部分で守らないといけないため、周りを骨や椎間板、靱帯などでしっかり守っています。
――脊柱管狭窄症とは、その神経が通っている部分が狭くなるということですか?
浅野 その通りです。様々な原因がありますが、周りの骨や靱帯が分厚くなるなどで、脊柱管が狭くなり、神経を圧迫する。その結果、その神経が関係する部位に症状が出ます。比較的多いのが、腰椎脊柱管狭窄症といわれる腰部に狭窄が起こるケースです。それが原因で、腰部の神経が関係してくる、足の痛みやしびれを訴えられる人がいらっしゃるわけです。
――腰痛のイメージでした!
浅野 腰痛がある方もいますが、腰というよりも、少し下の方のお尻部分から足にかけて痛くなりがちです。また、狭窄症の方は背骨周りの筋力も弱いケースが多いため、筋肉性の腰痛や脊椎の変形を併発していることがあるので、腰痛も訴えられる方がいます。
――患者さんの傾向はありますか?
浅野 50代以上の人が多く、男女比は2対1や3対1くらいのイメージで、男性の方が多いです。推定500万人ほどの患者さんがいるとされています。
――痛みを我慢して悪化するとどうなる?
浅野 狭窄症が進行すると、神経が圧迫されて潰されます。足に命令がいかなくなり、足のまひにつながりかねない。さらに、その神経は膀胱や肛門の筋肉にも関係してくるため、膀胱直腸障害といい、排尿や排便が自分でコントロールできなくなる状態にもなりかねません。
――絶対に我慢しない方がいいですね
浅野 膀胱や肛門にまで影響してくるともう手遅れです。そうなる前に治療に取り組んでいただきたい。忙しいからと医療機関を受診するのを延ばし延ばしにはしないでください。手足の痛みやしびれといった症状に気づいた段階で整形外科を受診しましょう。骨折や転倒などがなければ進行が速い病気ではありません。しっかり生活習慣の改善や治療に取り組み、症状の改善を目指しましょう。
☆あさの・けんいちろう 社会医療法人一成会木村病院などに勤務。愛知医科大学を卒業後、東京北部病院などを経て、現職。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定リハビリテーション医、日本骨粗鬆症学会認定医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。