ボートレース住之江のSG「第39回グランプリ」は22日、いよいよ優勝戦。トライアルを勝ち上がったベスト6による「1億円バトル」が行われる。今年もトライアルを食い入るように見入ったボートレースファン歴46年の元天才ジョッキー・田原成貴氏(65)。有馬記念3勝を誇る「グランプリ男」が熱視線を注ぐレーサーは、ずばり毒島誠(40=群馬)だ!
【田原成貴氏が熱く語る】
今年も寒波とともに日本一を決める戦いがやって来た。毎年同じことを言うが、やっぱり暮れのグランプリは特別だ。選手は意地と名誉を懸け、ファンは情熱を水面にそそぐ。私も何度か住之江グランプリに足を運んだが、その空間には喜びと哀愁、高揚と緊張が密接に絡み合い、喜怒哀楽がぎっしりと詰まったスタンドはまるで生き物のように躍動感を帯びているのだ。ある者は一生懸命に選手の名を叫び、ある者は重い空気の中で静かに祈りを捧げる。彼らの目には一年の思い出が刻まれているのだ。
競馬界の頂点を決める有馬記念も同日、熱気を帯びた戦いを見せる。私はかねて「日本ダービーと有馬記念は違う」と言ってきたが、色にたとえるとダービーは青、有馬記念は灰色。有馬記念もボートレースグランプリ同様に「哀愁」があるのだ。現役騎手時代、何度かグランプリレーサーと会食したことがある。彼らもやはり「通常のSGとグランプリは全く違う」と口を揃えていた。そう、この年末の特別な日は全ての競技者と観客にとって夢と希望が交錯する場所なのだ。
そんな憧れの舞台でしのぎを削り、選ばれた6戦士。私は今年も全てのトライアルレースを見てきたが、毒島誠選手を推したい。8年連続出場というグランプリの常連。そして準Vが2回もある男だ。文字通りグランプリ制覇まであと一歩、黄金のヘルメットはもう手が届くところまで来ている。今大会もエンジンは抜群、1Mのかかりも素晴らしい。その上にメンタルも言うことない。私も大舞台を経験しているが、究極の勝負の前にはフッと「素」になる瞬間がある。極限の緊張の中で、一瞬だけ自分を俯瞰して見られる。そういう時に勝利の女神はほほえむのだ。今の毒島選手はまさにその精神状態であろう。
ボートレースはコンマ01秒の戦いだ。そのわずかな中に天国と地獄の境目がある。毒島選手よ、ここしかない! 心技体が揃った今こそ、グランプリレーサーの称号を手にするときだ。キミが1Mでしぶきを上げ、観客の絶叫の中でVゴールを切る瞬間がオレには見える。