ソフトバンクの山川穂高内野手(33)は今季34本塁打、99打点で2冠王に輝いた。不動の4番打者として全143試合に出場。ただでさえ重圧がかかるFA移籍1年目で、価値ある成績を叩き出した。
昨今は「投高打低」が進み、昨季は26発がパ・リーグ最多本塁打だった。長距離砲にとって見栄えがいい数字を残すことが困難なシーズンが続いている。そんな中で誰よりもアーチをかけた山川は、しばし沈黙した後「30本打てる人がいなくなる…。少なくなりますよね」と言った。今季のNPBで30発以上をマークしたのは、33本塁打のヤクルト・村上宗隆内野手(24)と山川の2人だけ。25発以上でさえ、セは3人、パは2人という結果だった。
「3割打者」も年々減少傾向で、今季のセからは防御率1点台の先発投手が5人も誕生した。「30発超え」へのハードルも高くなる時代だが、山川はこの潮流をどう捉えているのか。
「敗戦処理というか、負けている展開で投げてくる投手でも150キロ以上を平気で投げてくる時代です。僕が40本以上打っていた時とは違うなっていうのは感じますよね。調子が良くても、1試合に何発もとはいかない。エース級と呼ばれる投手が(マウンドから)降りた後もドンドンくる。そりゃあ、当然、本数は抑えられますよね」
投手の球速は球界全体でアップし、数年前までは限られた存在だった「150キロ超え」の投手が試合展開に関係なく出てくる。速い真っすぐへの対応が打者の基本と心得る大砲は、打ち損じず一発で仕留める技術を高めるため、日々練習に打ち込んでいる。
長距離砲にとって不遇の時代ながら、山川はこうも達観している。「たとえ10本でホームラン王を取ったとしても、少ないからといって、その価値は変わらない。誰よりも一番多く打った本数なら、その10本にすごく価値がある」。シーズン中から「ムネ(村上)を意識している」と語り、両リーグ最多にこだわった。残した結果以上に、その思考に真価が詰まったシーズンだった。