次世代女王には魅力があふれている。フィギュアスケートの全日本選手権最終日(22日、大阪・東和薬品ラクタブドーム)、女子フリーは坂本花織(24=シスメックス)が史上9人目の4連覇を果たした。一方でジュニアの島田麻央(16=木下グループ)が143・42点、合計219・00点で堂々の2位。戴冠こそならなかったが、将来の女王候補としてインパクトを残した。そんな島田がリンク内外で見せる意外な〝ギャップ〟とは――。
シニアの厚い壁を感じた。冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)は着氷も回転不足、続く4回転トーループも転倒と、大技2本を決め切ることはできなかった。その後は大きなミスなくまとめるも「この3日間、シニアの選手と一緒に練習、試合をさせてもらって、スケーティングの部分で全然違うなと感じた。ジャンプも、もっと大きく跳んでいかないとシニアのトップには立てない」と悔しさをにじませた。
ただ、過去2度の全日本選手権はともに3位ながら、今回は自己最高の2位に入った。「来年はちょっと優勝してみたいなという思いが少し出てきた」と意欲的。世界女王に君臨する「坂本時代」の中で、次世代のエースが対抗馬に一躍名乗りを上げた。
そんな島田が特にこだわりを持つのが〝大技〟だ。2022年頃から、トリプルアクセルと4回転トーループの大技2本を組み込んだ構成をより強く意識するようになった。23年ジュニアグランプリ(GP)ファイナルのフリーでは、シニアを含めて日本女子で初めてトリプルアクセルと4回転トーループを1つのプログラムで成功。高得点が期待できる分、失敗時のリスクも大きいが「やっぱり(トリプル)アクセルだけでも、4回転(トーループ)だけでも自分じゃないなと思う。2つ挑戦し続けるのが自分らしいところ。そこはずっと挑戦し続けようと思っている」と己の信念を貫く構えだ。
技に対しては譲れない強い意思を持つ一方で、リンク外でのぞかせる〝ギャップ〟も見逃せない。「一番好きな食べ物はお寿司。海鮮はウニ以外何でも食べられるけど、特に好きなのがマグロとサーモンってだけで、基本は全部好き」と素顔はいたって普通の女子高生。サンリオ社のキャラクター「ハンギョドン」に夢中で、今大会には「緊張する私の心をほぐしてくれる仲間」として、そのグッズを「数え切れないくらい」持参した。硬軟さまざまな面を持ち合わせるところが、島田の魅力と言えるだろう。
年齢制限で26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪の出場資格はない。それでも「4回転(トーループ)の精度をもっと上げて、もっといい4回転にしたい」とモチベーションの高さに変わりはない。スターの素質を秘める逸材が、30年冬季五輪に向かってまずは日本一の座を目指す。