阪神・佐藤輝明内野手(25)が23日に兵庫・西宮市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、現状維持の年俸1億5000万円でサイン(金額は推定)。話し合いの席で球団側に、ポスティングシステムを使った将来的な米球界移籍の希望を伝えたと明らかにした。生え抜き育成路線が実り、投打で有力な選手が一気に台頭しつつある阪神だが、〝ある時期〟を境に主力選手たちが米球界へ一斉流出してしまう恐れも出てきている。
「お願いはしています。球団も前向きに考えてくれていると思う。いい話し合いができたのかなと。しっかり伝えたのは今年が初めてなので」。更改後に行われた会見の場で、虎の規格外男は球団サイドとの交渉の事実をあっけらかんと認めた。
今季でプロ4年目を終えた佐藤輝が海外FA権を取得するのは最短でも2029年のシーズン終了後。海を渡る時には31歳になっている。「心技体が最も充実した20代のうちに世界最高峰の舞台に挑みたい」という欲求はアスリートである以上、止めようがない。
佐藤輝と同学年の才木浩人投手(26)も、20日の更改後に将来的にポスティング移籍したい意思を明かしたばかり。自身の年齢と海外FA権取得までの期間を考慮した上で「30代とかになったらちょっとしんどい。28、29歳で行けたらベストかなと」と語っていた。海外FA権を得るまでの年数は、選手側が思い描くキャリアデザインとかい離しているだけに毎年のように労使間の火種になってしまっている。
この日、嶌村本部長も「ポスティングは球団の権利であることは大前提。現状のルールでは崩せない」と慎重な姿勢を示すしかなかった。時間と金と労力をかけ、大切に育ててきた看板選手たちを安易に〝売り飛ばす〟行為はファンをはじめ親会社、スポンサーなどに対する背信にもなりかねないだけに苦悩がにじむ。
それでも球団では22年オフに藤浪、今オフには青柳と2選手のポスティングを容認。「若いうちに米球界へ挑戦したい」という両者の訴えを、これまでのチームへの貢献も加味して受け入れた格好だ。粟井球団社長は「ポスティングを容認するかはケース・バイ・ケース」との認識を示しているが、これらの〝前例〟を佐藤輝と才木の2人も強く意識しているはずだ。
両者のポスティング移籍が現実味を帯びるのは、20代最後のシーズンを迎える3年後の27年前後になるだろう。2人より2学年下の若き主砲・森下も、すでにメジャー移籍への思いを公言してはばからない。日米球界の移籍ルールが成熟していない以上、労使間のモヤモヤはいつまでも続くことになる。