世界女王の現在地とは? フィギュアスケートの全日本選手権で史上9人目の4連覇を果たした坂本花織(24=シスメックス)が23日、大阪市内で開かれた記者会見に出席。3連覇中の世界選手権(来年3月、米国)は「あくまで通過点」と語った。かねて「最終目標」と明言する2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪には、強豪のロシア勢が参加する見込み。五輪2大会連続出場の鈴木明子氏(39)が取材に応じ、ロシア勢と渡り合うためのポイントを指摘した。
日本一決定戦で、坂本が存在感を示した。全日本選手権のフリーは後半の連続ジャンプで着氷が乱れるも、多くの選手が「独特の場所」と話す大舞台で安定した演技を披露。鈴木氏は「ミスがあっても最小限に抑えてまとめ上げる力、プレッシャーのかかる大会でも自分の持ち味を発揮したフリーができるところは、やはり強いなと思った」と高く評価した。
かつて日本女子勢としのぎを削ったロシア勢は2022年のウクライナ侵攻以降、国際大会から姿を消している。しかし、ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪では再びライバルとして復帰する見通しだ。21日まで開催されたロシア選手権の女子はアデリア・ペトロシャン(17)が世界歴代2位に相当する262・92点で2連覇。トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)と4回転トーループ2本を成功させた。
ただ、坂本はロシア勢にはない強みを兼ね備えている。フィギュアスケートは技術点(ジャンプやスピンなどの技術要素)と演技構成点(プログラム全体の表現力などの要素)の合計点で争うため、ジャンプ以外のスキルも必須だ。
鈴木氏は「ロシアの選手が4回転ジャンプを何本入れてくるかは気になるところかもしれないが、坂本選手は演技構成点も非常に高く評価されている。プログラムの内容の濃さや一つひとつの出来栄えなど、全体の完成度を強みに今まで戦ってきた」と指摘。今季もフリー曲「シカゴ」では息つく暇がないハイレベルな構成にチャレンジするなど、長所に磨きをかけている。
そんな坂本は、ロシア勢の復帰を歓迎。激しい頂上決戦が予想される中で、鈴木氏は「フィギュアスケートは点数の高いジャンプだけを跳べばいいという競技ではない。ジャンプだけでなく、プログラム全体の難度の高さをロシアの選手との戦いで見せてほしい」とエールを送った。
また、男子は鍵山優真(21=オリエンタルバイオ・中京大)が全日本選手権で初優勝。世界選手権、ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪での金メダル獲得へ弾みをつけた。鈴木氏は「波乱となった男子の戦いの中で、しっかりと実力を出しての優勝は今後の自信につながるものになったのではないか」と太鼓判。世界に誇る日本の男女エースの戦いから、今後も目が離せない。