またクマを巡って議論が起きた。23日夕、福島県喜多方市内の民家にツキノワグマが現れた。住民が家に帰ると、クマがこたつに頭を突っ込んでいたというからビックリ。翌24日になって麻酔の吹き矢で眠らされたクマは山に放たれた。秋田県ではクマの殺処分にクレームが殺到する騒ぎもあったが、喜多方市には「市民よりクマか!」と怒りの声が寄せられているという。
同市有害鳥獣対策室によると、民家の裏側が山の斜面になっており、そこから民家の壁を破る形でクマが侵入したという。クマは茶の間のこたつに頭を突っ込んでいた。「具体的に何か分かっていませんが、こたつの上にあった食料が食べられていました」(同室担当者)。みかんでも食べていたのかもしれない。
翌24日午前に喜多方署員らが花火などを使って追い立てた結果、クマは民家から近くの小屋へ。警察官が盾を持ってガードしているわきから獣医師が麻酔の吹き矢を放ち、クマを眠らせることに成功した。「小屋にとどまってしまったため吹き矢を使うことにしました。クマの正面からだと骨が厚くて効かないということで背中に吹き矢をしています」(同)。しばらくして麻酔が効いて眠ったクマは山に放たれた。
先日は秋田県秋田市のスーパーにクマが侵入し、殺処分されたことが話題になったばかり。全国から秋田県に「クマがかわいそうだ」などとクレームの電話があり、佐竹敬久知事が「もし私に電話が来たら完全に相手を威かくし、『お前のところにクマを送るから住所を送れ』と言う」と憤慨していた。
それだけに喜多方市が殺処分しなかったことがクローズアップされている。
前出担当者は「殺処分ありきではありません。まずは追い払う。それがうまくいかなかったので麻酔を使いました。できる手を打ったという認識です。喜多方市はクマを駆除しませんということではありません。今回は最適な方法が麻酔して放獣だったということ」と説明した。
現場は住宅地で銃の使用が禁止されているという事情もあった。「有害捕獲といいますが、(報道に)取り上げられなかったものも過去にあって殺処分もされています。また、クマは有害鳥獣ですが同時に保護動物でもあります。実害があってからやむを得ず処分することはあります」(同)
付近ではクマの目撃情報がいくつかあるが、通常ならこの時期のクマは冬眠していても不思議ではないという。なぜ今回は民家に押し入ったのか。前出担当者はあくまで「推測」と強調した上で「今回のクマは体長90センチでした。小グマと成獣の境目です。推測ですが成獣だとしても若い個体で、親離れしてから初めて1人で冬眠するタイミングで、冬眠がうまくいかなかったのかもしれません」と話した。
こたつにクマが入っていたというキャッチーさから全国的なニュースとなった。このことで同市には殺処分しなかったことについて賛否が寄せられているという。「『保護してくれた』というものから厳しいものでは『市民よりクマが優先か』というものまでありました」(同)
こたつの温もりを忘れられないクマがまた戻ってくるのではないかと指摘する意見もある。前出担当者は「対策はしています。かなり遠い山に放しただけでなく、クマ除けを設置するなどしています」と明かした。
ちゃんと冬眠できるといいのだが…。