ポスト〝原体制〟はどうなる――。今年も盛り上がりを見せた東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)で、脚光を浴びた各校を短期連載で検証する。第1回は、2年連続8度目の総合優勝を果たした青学大。レース後に原晋監督(57)が進退に言及して注目を集める中、名将が意識する組織づくりを踏まえ優勝校の今後に迫った。
「来年、再来年ではないが、近い将来、バトンタッチする時が来る。普通は60(歳)くらいで定年だから」。2004年の監督就任以来、30年以上箱根路から遠ざかっていた青学大を常勝軍団に育て上げた名将がついに〝引き際〟に言及した。
選手たちには常に「半歩先」に目標を設定させ、その達成を繰り返すことで自信につなげてきた。だからこそ、自身も「半歩先」を意識している。「原がいるから強い、いなくなったら弱くなるという組織にはしたくなかった」。カリスマが去っても実力を維持、それ以上に飛躍する集団を目指しているがゆえの発言だ。
早大大学院で得た知識や長年の指導経験などをもとに「原メソッド」を構築。「型がなかったら型破りはできない。改革はベースがあって初めて新しいものを切り開ける」。箱根駅伝までの1年間を逆算し、4期に分けたサイクルで各チームに合った強化策を取り入れて成果を出し続けている。
指導法の確立だけでなく、練習環境の整備にも力を入れる。昨秋には青学大の選手寮(東京・町田市)をフルリフォーム。厨房の料理スペースを整え、OBの鶴貝彪雅さんと妻で寮母の美穂さんが栄養バランスの取れた料理を提供。さらに交代浴ができる風呂場やトレーニングルーム、マッサージルームも完備している。プロスポーツチーム並みの充実度には原監督も「故障させない仕組みをつくっている。全てにおいて組織化されたものがある」と太鼓判を押す。
そして指導体制も盤石だ。中大のほか、実業団のエスビー食品、中国電力を率いた大物指導者の田幸寛史コーチを腹心として23年4月に招へい。新進気鋭の若手指導者でOBの伊藤雅一コーチも育っており、トレーナー陣も選手をしっかりサポート。原体制後も常勝を継続できる組織づくりが着実に進んでいる。
「そろそろOBが引退する頃に差し掛かっているので、上手に引き継ぎしつつ、強化も止めずにやっていく時期に来ている」と原監督。直近11大会で8度の箱根駅伝総合優勝を果たした青学大が、どんな〝新時代〟を迎えるのか楽しみだ。