五輪汚職事件で逮捕、起訴されたKADOKAWAの角川歴彦元会長が長期勾留は憲法違反だとして国に2億2000万円の損害賠償を求めた裁判の第1回口頭弁論が10日、東京地裁で開かれた。袴田巌さんや大川原化工機の冤罪事件が相次ぎ、人質司法への批判や圧力は高まるばかりだ。
「なぜ理不尽な目に遭って、長期勾留されなくてはいけなかったのか。日本の司法はグローバリゼーションから立ち遅れている。国民の皆さまに知ってほしい」と訴えたのは角川氏。
東京五輪のスポンサー選定で組織委員会幹部に賄賂を渡した罪に問われ、2022年に逮捕され、約7か月間、勾留された。コロナ感染や意識喪失、肺炎などで入院するなどしたが、適切な医療や薬が十分に処方されなかったなどして、保釈後の昨年6月に「人間の証明 勾留226日と私の生存権について」を出版すると同時に「角川人質司法違憲訴訟弁護団」を結成。袴田事件で再審と釈放の決定を出した元裁判官の村山浩昭弁護士が弁護団長を務め、〝無罪請負人〟の弘中惇一郎弁護士や国際人権に精通する海渡雄一弁護士らが集結し、国賠訴訟に踏み切っていた。
人質司法を巡っては、レバノンに逃亡したカルロス・ゴーン元日産自動車会長が「日本は違法な人質司法が行われている」と海外メディアに訴え、世界中で報じられた。法務省は「身柄拘束によって自白を強要するものではなく、人質司法との批判は当たらない。人権に配慮している」と火消しに追われているが、長期勾留はやまず、昨年4月の衆院東京15区補選を巡る選挙妨害等の公選法違反で逮捕されたつばさの党の黒川敦彦代表も約7か月の勾留は違憲だとして、国賠訴訟を提起している。
角川氏の弁護団で憲法違反のエキスパートの伊藤真弁護士は「人質司法は日本の刑事司法の闇の部分。捜査機関の違法行為、不祥事を含めて裁判所にきちんと認めさせるのが大事」と訴えた。
角川氏が無罪を主張している五輪汚職での公判は現在も続いている。判決が出る前での訴訟は異例だが、角川氏に国賠訴訟を提案した弘中氏は「刑事が始まってないのにやるのはどうかとあったが、やってみてよかった」と意義ある裁判にしていきたいとした。