ソフトバンクは今季から本拠地・みずほペイペイドームの「コカ・コーラシート」に防球ネットを設置する。プレーヤー目線に近い臨場感ある観戦が楽しめるフィールドシートを巡っては、このオフも現場から打球直撃の危険性を指摘する声が上がり、球団は「選手ファースト」に事業の見直しを図ることを決めた。
昨年12月の契約更改の際、近藤健介外野手(31)は「(打球がファンに)当たっているのを何回も見たことがあるし、僕らも当ててしまうのはイヤ。そこには子供たちもいたりする。臨場感がなくなるかもしれないけど、安全面も考えてほしい。選手も不安なくやりたい」と訴えていた。
不慮の事故は当事者の精神面にも影響する。かつてMLBでも選手の意見を反映して、防球ネットの増設が進んだ。若い選手らも上げていた声を絶対的主力の近藤が後押しして、球団の決定に至った形だ。
迅速な判断に、ファンの間からは「選手の要望が届いてすばらしい」と歓迎する声が多く上がった。一方で、球団は昨年までフィールドシートの領域を段階的に拡大してきた。「臨場感ある観戦」を求める一定数のニーズがあったからだ。そのため、今回の決定に「臨場感が味わえなくなる分、チケット代を安くしてほしい」「勝利のハイタッチはどうなるのか?」といった声も散見された。
観戦に関わる事案だけに、ファンの関心の高さは球団も当然ながら把握している。球団は現時点で「価格改定の予定はない」(事業関係者)。選手との貴重な交流機会である勝利のハイタッチについては、可動式ネットの導入や交流スペースの確保などを検討し「何があっても継続していきたい」との考えだ。
防球ネットの設置により、安全面の不安が強かったファンの需要増も想定されるだけに、市場を見極めて価格改定の議論は進みそうだ。