三菱UFJ銀行の練馬支店の貸金庫から顧客の金品十数億円相当を盗んだとして、警視庁捜査2課は14日、窃盗の疑いで元支店長代理の今村由香理容疑者(46)を逮捕した。
調べでは、練馬支店で貸金庫を管理する立場だった2024年9月ごろ、貸金庫室をスペアキーを使って無断で開け、顧客2人が預けていた金塊計約20キロ(約2億6000万円相当)を盗んだ疑い。盗んだ金塊を複数の質店や買い取り店で売却し、得た金はFX投資に充てていたという。
同行によると、玉川支店と練馬支店に勤務していた24年10月までの約4年半で約60人が被害に遭い、総額は十数億円に上る。
事件は、貸金庫の利用者から指摘があり、同10月31日に発覚した。今村容疑者が認め、同行は11月に懲戒解雇し、翌12月に警視庁に刑事告発した。
今村容疑者は、短大卒後、1999年に一般職で入行。後に総合職に転じ、支店長代理となった。支店長代理は支店長、副支店長、次長、課長に次ぎ、係長の一つ上のポジションに当たるという。
10億円以上を盗むという前代未聞の事件となった。これは今村容疑者の供述に基づく金額のため、実際の額はもっと多い可能性もある。
元警察関係者は「貸金庫に何が入っていたかは顧客本人しか分かりません。被害状況は被害に遭った顧客の自己申告で、警察としては被害状況を調べ上げるのがものすごく大変だったようです。顧客に確認を取っても何の貴金属を預けたのか、現金をいくら預けたのか記憶が曖昧でしょうから。数万円の現金や指輪など細かい窃盗については特定が難しいですし、実際にいくら盗んだのかは容疑者にしか分からないことです。金塊は換金した記録があるので、そこで逮捕したのでしょう」と語る。
窃盗罪は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金と軽いものだ。しかし、民事訴訟がある。
「三菱UFJ銀行が顧客への弁済を進めていますが、ある程度、顧客の言い値を払うことになるでしょう。その後、銀行が今村容疑者に弁済額に、銀行の信用を失墜させた損害賠償などを加算して民事訴訟を起こし、盗んだ金額以上を請求するかもしれません。容疑者が投資ですべて使い切っていたとして、自己破産しても、〝悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権〟は免責されません」と同関係者は話している。