大相撲初場所3日目(14日、東京・両国国技館)、横綱照ノ富士(33=伊勢ヶ浜)が元大関の幕内霧島(28=音羽山)を寄り切って2勝目(1敗)を挙げた。過去2場所は両ヒザの古傷や糖尿病の影響で全休したが、今場所は〝不屈の魂〟で土俵に上がっている。ただ気になるのは、実際の状態がどうなのか。2020年頃から照ノ富士の専属トレーナーを務めるオニミン株式会社の秀島正芳氏(42)が、横綱の現状を明かした。
大関経験者の霧島を、約1分半の長い相撲で下した。取組後に照ノ富士は「体が出来上がっているわけではないので、じっくりいきました」とうなずいた。
15年夏場所後に大関昇進した後、内臓疾患と両ヒザの故障などに苦しみ、一時は序二段まで転落。19年春場所から再起し、番付の頂点まで上りつめた。だが、昨年の名古屋場所で10度目の優勝を遂げた後、2場所連続で休場。初場所の成績次第で進退問題に発展する可能性もある中、初日に小結若隆景(荒汐)に敗れたが、その後は連勝で踏ん張っている。
照ノ富士は秀島氏と同社の早川怜トレーナーからサポートを受けてきた。秀島氏は、ヒザの状態について「変形しているし、曲げたり、伸ばすのも痛いわけで、日常生活にも支障が出ているレベル。その日によって(状態が)少しマシだったり、ダメだったりという感じ。若い頃からヒザを壊していて、今から一切相撲を取らなかったら治るわけでもない」と説明。
また「糖尿病の影響で食事制限もあり、体重が落ちていて、力が入りづらくなっている。今場所もとりあえず相撲ができる状態までは持っていけたという感じ」と苦しい現状を明かした。
場所前の昨年12月に2日間、照ノ富士は秀島氏のもとでトレーニングを実施。休場中に落ちた基礎筋力を戻し、ヒザ周りの動きをよくするための運動を行った。
秀島氏はその時の様子について「照ノ富士は『意地でも初場所は出る』と言っていた。横綱としての覚悟を今回はいつも以上に感じた」。本人も初場所中に「今場所は自分のすべてを出し切って、ダメだったら…という思いでやっている」と並々ならぬ決意を語っている。
その上で秀島氏は「照ノ富士は『今日(体が)壊れてもいい』という思いでやっている。体がボロボロでも、弱音を一切吐かないところが一番すごいところ。先を見据えずに、目の前の一日をやり切ることしか考えてない」と横綱の精神面の強さを絶賛した。
今場所は大関琴桜(佐渡ヶ嶽)と大関豊昇龍(立浪)が綱とりに挑戦中。角界には世代交代の風が吹きつつあるが、全身全霊で土俵に上がる一人横綱が〝最後の壁〟となりそうだ。