韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(64)が昨年12月3日に宣言した「非常戒厳」を巡り、高官犯罪捜査庁(高捜庁)や警察などの合同捜査本部は15日、内乱を首謀したとして、内乱容疑で尹氏を逮捕した。大統領は憲法で不訴追特権が保障されているが、内乱罪は例外となっている。現職大統領の身柄拘束は韓国史上初めて。
今月3日に拘束しようと試みたが、大統領警護庁に阻止され失敗し、今回が2度目だった。高捜庁は尹氏を庁舎に移送し、取り調べた。尹氏は黙秘している。15日の取り調べが終わると、ソウル拘置所の独房に移送される。高捜庁は、48時間以内に最大20日間の身柄拘束が可能な逮捕状を請求する見通し。
尹氏は拘束前に収録した国民向けの談話の映像を公開し「この国では法が全て崩壊した」と主張。「流血の事態を防ぐため、違法捜査だが出頭に応じることにした」と話した。
尹氏は国会で弾劾訴追され職務停止中だが、「内乱罪には当たらない」として抗戦してきた。憲法裁判所で始まった弾劾審判でも正当性を訴えている。
韓国事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏は「非常戒厳自体、大統領権限で認められていますし、尹氏は国会決議に従って6時間でこれを解除しています。尹氏のやり方は多少乱暴で唐突だったにせよ、合法です。不逮捕特権の利かない内乱罪を持ち出したのは、初めから逮捕ありきの苦肉の策でしょう」と分析した。
韓国政界の混迷はまだ続くかもしれない。「尹氏が非常戒厳を宣言した理由は、中央選管を押さえ野党の選挙違反の証拠を押収するためだったといわれています。尹氏は手に入れた〝証拠〟に自信をもっており、取り調べや裁判に際して、すべてをぶちまける用意があるとしています。果たして、その爆弾発言を韓国のメディアが正確に伝えるのかどうか」と但馬氏は話している。