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イチロー氏とカート・シリングの〝仲人役〟が打ち明ける「ユニホーム交換秘話」

東スポWEB 2025年1月17日 5時7分

今年の野球殿堂入りが16日に東京都内の野球殿堂博物館で発表され、競技者表彰のプレーヤー表彰で日米通算4367安打のイチロー氏(51)が選出された。競技者表彰で史上7人目となる候補者1年目でのメンバー入り。21日(日本時間22日)の米国野球殿堂入り発表でも日本選手初の選出が確実視される。そんなレジェンドの秘話を、本紙連載「ワッショイ!!スポーツ見聞録」でおなじみのスポーツライター・楊枝秀基氏が明かした。

【ワッショイ!!スポーツ見聞録】大昔のお話ではありますが、お祝い原稿ですので――。頼まれてもいないのに、あのイチロー氏の〝仲人役〟を務めさせてもらったエピソードをお披露目させていただきます。

舞台は1998年オフの日米野球。僕は社会人1年目でした。イベントの目玉はカブスの主砲だったサミー・ソーサ。このシーズンに66本塁打を放ったスーパースラッガーです。当時、僕は駆け出しながら所属していた会社のむちゃぶりでソーサの連載企画を担当させられておりました。実力不足の僕にはとんでもない〝重荷〟でした。

試合開始の何時間も前からスタンバイし、メジャーリーガーたちが宿泊していた都内ホテル近辺のバーガーショップで「’98 MLB完全ガイド」的な雑誌を熟読。有力選手の詳細情報を予習しておりました。

先発陣の目玉だったのは、後にダイヤモンドバックスでワールドシリーズMVPを獲得するなど通算216勝、3116奪三振を記録したフィリーズのカート・シリングでした。97年から2年連続でシーズン300奪三振。98年は両リーグ最多の268回2/3を投げ、15完投、15勝で直球のMAXは158キロなどと書いてあります。豆知識のように、奥さんの名前はショーンダさんと記されておりました。

しばらくすると、僕の隣席に白人の大男とブロンドヘアの美女が着席しました。ふと見上げるとどう考えてもシリング夫妻。勇気を振り絞ってお2人に声を掛けさせていただきました。「ミスター・シリングとショーンダ夫人ですよね? いや、僕は怪しい者ではないんです。日米野球の取材班で駆け出し記者で…」。しどろもどろで自己紹介していると、スーパースターはこんな〝神対応〟で受け入れてくれました。

「こんな遠い日本で、私の家族の名前まで調べてくれている熱心なライターと出会えるとは光栄だ。本当に感謝する。君、名前はなんていうんだ? 私をアメリカの兄だと思って球場では何でも質問してくれ。絶対に遠慮するなよ。君は今日から友人なんだから」

こんな状況、奇跡ですよね。夢見心地で東京ドームに移動して取材を始めると、シリングが向こうからやって来るではないですか。「俺は口だけじゃないからな。君は友人だから。名前はヒデキだったよな」と口にすると、ガッチリ握手で迎えてくれました。

程なくすると、球場通路でユニホームとスパイクを抱えたオリックス・イチローが目の前に――。面識はなかったが「どうされました?」と話しかけると「カート・シリングとユニホームを交換したいんですけど、姿を見ましたか?」とのことでした。

こんな展開ってあり得るのかと思いながら「シリングならマブダチなんで任せてください」と調子に乗って、MLBスタッフに早速問い合わせ。シリングを呼び出してもらい2人のスーパースターをおつなぎすることに成功し、滞りなくユニホーム交換が行われました。

今でもしがないスポーツライターの僕が27年前に放ったラッキーパンチ。野球殿堂入りを決めた天下のイチロー氏がこの事実を覚えていてくれているのか。それは分かりませんが、あの日の〝仲人役〟が東スポ紙面をお借りして、勝手にお祝い原稿を記させていただきました。(一部敬称略)

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