奪い合いが始まるのか。昨夏の東京都知事選に無所属で出馬し約15万票を獲得して5着となったAIエンジニアの安野貴博氏に政界から熱視線が集まっている。
16日、安野氏はAIプロジェクト「デジタル民主主義2030」を発表。政治家や政党に協力を呼び掛けた。
都知事選では小池百合子都知事に蓮舫氏、広島県安芸高田市の前市長を務めた石丸伸二氏らが注目を浴びる一方で、政界関係者から高評価を集めていたのが安野氏だった。30代若者としてAIやデジタル技術の活用を訴えていた。
この日の会見ではAIを使って多くの人の声を集める「ブロードリスニング」、民意を政策に反映できるプラットホームの構築、政治資金を透明化するためのダッシュボード開発を提示。必要な技術を無料で提供すると訴え、協力してくれる政治家、政党、自治体を募集すると呼び掛けた。
さっそく政界から前向きな反応がある。国民民主党の榛葉賀津也幹事長はX(旧ツイッター)で「安野さんのプロジェクトに参加出来るよう、至急検討します」と反応し、玉木雄一郎代表(役職停止中)も「国民民主党らしい取り組みになると思うので、やりましょう」とポスト。また、日本維新の会代表の吉村洋文大阪府知事もXで「日本維新の会で実際に活用してみます」と言及した。
引く手あまたな安野氏だが、特定の政治家、政党を支援するつもりはないという。しかし、安野氏を巡る政党間の奪い合いが起きそうだ。
すでに動きはある。都政関係者は「都知事選において安野氏のAIを使った政策が一定の評価を得たことで小池氏もAIの必要性を実感し、安野氏を『GovTech(ガブテック)東京』のアドバイザーに招いています」と明かした。ガブテック東京とは都の外郭団体で東京全体のDXを進める組織だ。
「これは安野氏をほかに取られないようにという狙いもあります」(同)。例えば地域政党「再生の道」を始動させたばかりの石丸氏と安野氏が接近してもらっては困るというわけだ。
もっとも安野氏はあくまで中立を保つ意向。「今はこうした活動をしていろんな政治家と協力したい」と述べ、すべての政治家、政党に参加を呼び掛けている。