独特の世界観と映像美で観客を引きつけた米映画監督のデビッド・リンチさんが死去したことを16日、本人のフェイスブックを通じて親族が明らかにした。78歳だった。
「深い悲しみを込めて、私たち家族は、1人の男性でありフィルムメーカーのデビッド・リンチの死去を発表します」という一文で始まったフェイスブックへの投稿は「彼がもはやともにいないことで今、世界に大きな穴が空いた。だが、彼ならこう言うだろう。『ドーナツを見よ、穴でなく』。それは美しい日で、ずっと空は青く、黄金の陽光が降り注いだ」と続き、締めくくられた。
自主制作した「イレイザーヘッド」(1977年)で注目され、巨匠への道を駆け上がったリンチさん。髪を逆立てた男が象徴する同作のビジュアルは強烈で、セリフが少ないモノクロ映像は全編を通じて陰鬱な空気を漂わせた。こうした作風から「カルトの帝王」との称号も授かる。「エレファント・マン」(80年)では異形で見世物になった青年を描いた。
一方で、ヒロインを際立たせる演出にも長けていた。テレビドラマが大ブームを呼んだ「ツイン・ピークス」のヒロインを演じたシェリル・リーは、役名の「ローラ・パーマー」が代名詞に。オスカー女優ローラ・ダーンは「ワイルド・アット・ハート」ではじける演技を見せた。
複雑怪奇、迷路のような難解世界を浮かび上がらせた「マルホランド・ドライブ」では、ナオミ・ワッツを開花させる。父が巨匠ロベルト・ロッセリーニ監督、母が名優イングリッド・バーグマンという超良血のイザベラ・ロッセリーニは「ブルーベルベット」をキャリアの踏み台にした。
リンチさんはまた、X JAPANの楽曲「Lоnging~切望の夜~」(95年)のミュージックビデオの監督も務めている。