指導者の資質は…。大相撲初場所6日目の17日、横綱照ノ富士(33=伊勢ヶ浜)が東京・両国国技館で引退会見を行った。今後は部屋付き親方として後進の指導にあたり、将来的には師匠になることも視野に入れる。角界内では経験に加えて「人間力」も高く評価されており、親方としての手腕に期待が集まっている。
照ノ富士は会見で「思い通りの相撲が取れなくなった。これ以上は中途半端な気持ちと体で土俵に立つべきじゃない。負けた初日に師匠(伊勢ヶ浜親方)に『もう1回負けたら引退したい』と話しました」と決断の経緯を説明。「自分にウソをつかない、自分に負けない力士を育てたい。そういう力士は、必ず強くなる」と後進の育成に意欲を示した。
指導者としての期待も大きい。最初の大関時代は、やんちゃなキャラクターだった。酒好きで夜な夜なネオン街へ出陣。「欲しいもの? おカネ」と公言し、取組前には懸賞の本数を指折り数えて皮算用していたほど。支度部屋ではライバル力士の敗戦をあざ笑ったこともあった。その後に両ひざのケガで序二段まで転落すると、人柄が一変。節制に努め、故障を抱える力士にはいたわる言葉をかけるようになった。
音羽山親方(元横綱鶴竜)は「ケガをしてからいろんなことを見つめ直したと思う。人としての成長があったからこそ、今(序二段から横綱昇進)につながったことは間違いない。ただ相撲だけ取ればいいわけじゃない。ケガをした人にも、同じ苦しみが分かるから思いやる心が生まれる。親方としても楽しみ」と期待を寄せる。
日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)も「苦労しているだけに、立派な親方になるでしょう。ケガをせずに終わったら、ケガをした人のことは分からない。いろんな人の気持ちが分かると思う」と指導者の資質に太鼓判を押した。照ノ富士親方の手腕に、今から注目だ。