タレント・中居正広の女性トラブルに社員が関与したと報じられているフジテレビが皮肉な状況に直面している。お粗末な会見で、スポンサーが相次いでCMを見送るなど厳しい事態に陥る中、親会社であるフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)の株価が続伸しているのだ。抜本的な改革を求める声が強まり、株式アナリストは株主総会前までの港浩一社長の辞任は不可避との見方を示した。
フジHDの株価は20日、一時138・5円高の1829円までつけ、終値は95円高の1785・5円で、前営業日比で5・6%高だった。中居とフジテレビの問題が最初に報じられた昨年12月19日の終値は1858円で、年明けの1月9日に1599円まで下げていたが、その後は続伸している。
17日午後に開いた港社長の会見は記者クラブだけへの対応や中身がなかったことで猛批判を浴びた。50社を超える企業がCMの差し止めや差し替えに動いたことで、週明け20日の株価は大きく下げてもおかしくない状況とみられたが、さらに買いが殺到する結果となった。
フジHDの株価が続伸する背景をアナリストはこう読み解く。「テレビ業界は株主軽視の経営が顕著で、中でもフジHDは在京キー局の中で最もPBR(株価純資産倍率)が低く、0・43倍しかない。今回の問題が出てきたことで、CM撤退などで業績が一時的に悪くなっても今後、経営陣の刷新、自社株買いや株主還元が良くなるとの期待から買いになっている」
東証は2年前から上場企業が株価や株主を軽視していることに改善を促し、中でも約半数を占めていたPBR1倍割れの企業に対しては、名指ししてきた。PBR1倍割れ企業は解散して、保有財産を株主に分けた場合に受け取れる額が多くなる状況だ。
テレビ局は認定放送持株会社制度や外資規制などで、敵対的買収などから守られていることもあり、PBR改善の動きは鈍いままだ。PBRは20日時点で、テレビ東京ホールディングスが0・82倍、日本テレビホールディングスが0・7倍、TBSホールディングスが0・6倍、テレビ朝日ホールディングスが0・51倍。最も低い0・43倍であぐらをかいているのがフジHDだった。
堀江貴文氏らインフルエンサーが「株主総会に行こう」と呼び掛け、フジテレビ改革案を提示するなどして、個人投資家の間で注目を集めている。「株価の動きは堀江氏らよりもおそらく海外短期筋がケタ違いの買いを仕掛けている。不祥事をバネに化ける株とみている」(前アナリスト)
港社長が立ち上げを表明した第三者の弁護士を中心とした調査委員会の調査結果が出るまでは数か月を要するとみられる。6月に予定される株主総会ではフジHDの株を7%超保有している米投資会社が資産売却などの議案を提出する意向を示し、大荒れが予想されるが、その前に大きな動きを予測する。
「今起きているスポンサー離れのドミノ現象はとりあえず港社長が辞めないと収まらない。株主総会の前までに決定するのではないか。次はフジHDの取締役の責任問題で、17人も取締役がいる。古い体質の会社ほど、ポストをあてがうので役員は多い。バカな経営陣はいなくなってくれと刷新を求める動きになる」(同)
子会社にすぎないフジテレビの港社長のクビを切って、事態収拾となるはずもない。現体制に不満を持つ米投資会社をはじめとした物言う株主の声は大きくなっていき、株主の中から賛同者が増えていくのは避けられない状況だ。