【宮崎祐樹連載 オリのゴリBsを知り過ぎた男(47)】保険営業マンという本業を持つ傍ら、僕は2022年から社会人軟式野球チーム「Baseball Team NINE」の監督を務めさせていただいております。活動2年目の秋には初めて全国大会への出場権を手に入れることができました。
予選を勝ち抜いて9月30日から岩手県で開催された「高松宮賜盃第67回全日本軟式野球大会」に出場。現地では3勝することができベスト4という成績を残すことができました。周囲からはよくやったという評価もいただきました。でも、あと2勝で優勝できたチャンスを逃したという感覚が強いです。本気で全国優勝を狙っていただけに、僕としては準決勝進出に甘んじたと表現しておきます。
前回の当欄でも紹介しましたが、われわれのチームはグループホームや障がい福祉施設を運営する3つの会社が母体で、そこに勤務する支援スタッフが選手として活動しています。障がい者の方々は、自分たちを支援してくれる選手を熱烈に応援してくれる環境にあり、スタンドには400人ほどの応援団が集結してくれ「完全ホーム」のような雰囲気で試合に臨ませていただいています。
ただ、全国大会出場となるとその大応援団を帯同してということは難しくなります。移動費用や宿泊費に加え、介護や支援が必要な方々を飛行機で岩手まで案内するとなると、スタッフである選手がプレーに集中することも難しくなるでしょう。
そこでチーム運営に関わる3社のうちの株式会社SHINDEN・中本築代表が画期的な方法を実行しました。大会開始の2週間ほど前に現地の岩手を訪問。事前に同業者であるグループホームや障がい福祉施設をリストアップし、コンセプトに理解を示してくれた施設に営業をかけるという行動を起こしたんです。
当日は中本代表と監督である僕、選手らを伴って、アポの取れた現地の施設を一軒一軒、訪問させてもらいました。チームのポスターやステッカーを持参し、岩手で開催される試合に応援に来てくださいとお願いして回るわけです。趣旨にご理解いただけた施設のスタッフ、障がい者の方々には試合当日、お弁当を用意させていただいて観戦してもらいました。
事前にわれわれの存在を認知してもらった上で応援に来ていただいていたので、交流を深めることもできました。おのおのの施設の環境や雰囲気なども直接、訪問することで勉強になりました。僕自身、野球の監督としての経験だけではなく、業界への理解も深まり、中本代表の行動力にも改めて感心させられた貴重な機会でした。
こういったノウハウは言葉で表現するだけなら簡単ですが、実行して初めて具現化していくものです。知らない土地で軟式野球チームの応援を要請しても人は来てくれないだろう、などと心にブレーキをかけて行動していたら前には進めませんよね。これは野球選手とか経営者とか関係なく、どんな人にでも教訓になると思うんです。
高松宮賜盃全日本軟式野球大会でのベスト4という結果はもとより、選手たちや多くのスタッフの方々と触れ合うことによる人生勉強。チームの監督として一人の人間として成長させていただきました。