〝モンスター〟に無謀要求か。ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(31=大橋)は、今秋にサウジアラビアで試合を行う予定だ。当初はWBA同級暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との対戦が見込まれていたが、同国娯楽庁のトゥルキ・アラルシク長官は、WBA世界フェザー級王者ニック・ボール(英国)との激突を熱望。大きな波紋が広がりそうだ。
井上は24日に東京・有明アリーナで、負傷したサム・グッドマン(オーストラリア)の代役に指名されたWBO同級11位のキム・イェジュン(韓国)と対戦する。この試合後、井上陣営は5月に米ラスベガスでWBC同級1位アラン・ピカソ(メキシコ)と激突。今秋にはサウジアラビアで、かねて井上との対戦を熱望し、挑発を繰り返していたアフマダリエフと戦う計画とみられている。
井上が30億円とも言われる巨額スポンサー契約を結んだ「リヤドシーズン」(エンターテインメントイベント)を主催しているサウジアラビアの王族で、同国娯楽庁のアラルシク長官は、2025年の試合開催を計画中。すでに16人の世界的スターボクサーたちとマッチメークなどについて交渉しており、井上側とも話し合いを行っているという。
そんな中、メキシコメディア「tvazteca」は「アラルシク氏は見たい、実行したい4試合を示した」と報道。サウル・アルバレス(メキシコ)対テレンス・クロフォード(米国)、オレクサンドル・ウシク(ウクライナ)対モーゼス・イタウマ(英国)、タイソン・フューリー(英国)対アンソニー・ジョシュア(英国)に加えて、井上対ボールの対戦を熱望しているという。
ボールは現WBA世界フェザー級チャンピオンで井上の1つ上の階級となる。アラルシク氏はかねて井上の階級変更を希望しており、その初戦をサウジアラビアで「見たい」という意向とみられる。井上側は来年以降にWBC世界バンタム級王者・中谷潤人(M・T)との対戦まで視野に入れており、年内の昇級を検討していない。ただ、超大物から正式な提案を受けて、簡単には断れないような高額なファイトマネーを提示される可能性もありそうだ。
同メディアは、井上戦を含めた4つのドリームカードについて「最高級のイベントを開催できるか。公式発表で明らかになる」と伝えていたが、各種スポーツイベントをサポートしている代理店関係者は常々「スポンサーの意向はとても重い」と指摘している。
もちろん、アラルシク氏が井上側にボールとの対戦を強要するようなことは考えにくく、戦うことを断ることは可能だろう。しかし、正式に〝依頼〟されれば、井上サイドとしても戸惑いを隠せないはずだ。今後に大型スポンサー契約を結んでいる「リヤドシーズン」との関係にも、微妙な変化が生じるかもしれないだけに、今後の動向が気になるところだ。