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イチロー氏と一問一答「妻に感謝の気持ち」「最も大きな影響を受けたのは仰木監督」

東スポWEB 2025年1月22日 12時28分

米野球殿堂は21日(日本時間22日)に今年の殿堂入りメンバーを発表した。マリナーズなどで通算3089安打のイチロー氏(51=マリナーズ球団会長付き特別補佐兼インストラクター)が資格1年目、アジア人、日本選手として初めて選出された。野手史上初の満票に1票足りずに逃がしたが、得票率99・746パーセントは史上3位だった。

全米野球記者協会(BBWAA)のオンライン会見での一問一答は以下の通り。

――ベイエリアで魅せた2つのハイライトについて聞きたい。まずはオークランドでの(三塁)捕殺について何を覚えている?

イチロー氏 あの試合は先発じゃなくてイライラしていた。オークランドに初めて行って、ファンからなかなか厳しい声があったり、物が投げ入れられたり、すごくあのシーンは、怒りのエネルギーで結果につながったのがすごく大きかった。

――ブーイング? オークランドのファンがどうしてそうなったと思う?

イチロー氏 どうしてか分からないが、初めて日本人の野手が(メジャーに)来て、アメリカの洗礼というか、外国から来た訳の分からない選手にそうやって洗礼を浴びせたんじゃないかな。

――2つ目は2007年、サンフランシスコでオールスター戦初のランニング本塁打を放ったシーンについて

イチロー氏 あれは実は、(フェンスを)越えてくれなかったことすごくへこんでいた、ショックだった。越えたと思ったので。結果的には誰もやったことのないことに繋がったことで喜んでいた。あとは、3打数3安打で本塁打があって、3打席で代わったので、僕は友達もいて、早く予約していたレストランに行きたくて、早く帰ろうとしていた。試合中に。オールスター戦ってのはそういうことができる試合だったので、当時ね、で、帰ろうとしたらMLBの人から『MVPになるかもしれないから、ダメだ』と、止められて、で、僕はそれでも早くいきたいから、誰が逆転本塁打でも打ってって思っていたが、結果的にやっぱり時間がたってみて、あれでMVP取れてよかったなって、そういう思い出。

―27歳でメジャーに来て、こういうことになると想像できたか

イチロー氏 地球上で一人も想像していなかったでしょ。

――今まで達成してきたことの中で、この殿堂入りはどの位置に入るのか

イチロー氏 選手としての評価、プロ野球選手としての評価という意味ではこれは最(たるもの)、比べるものがない。これが最初で、最も大きいもので最後のものになる。これ以上はないし、この後ももちろんない。だから僕は別の、野球人として違う道をこれから進んでいきたい。もちろん、トップのものではあるが、特殊なのは過去に対する称賛であるということ。これがポイントだと思う。今やっていることへの称賛ではなく、過去への称賛なので、あくまで今をどう生きるか、ということを僕は考えていきたいと思う。

――イチローさんが来て、成績を残して、松井さんとか大谷選手が来るという道を作ったと言えると思うが

イチロー氏 それは僕にはわからない。人が判断すること。

――今でも選手みたいに球場にきて練習をしていると聞いているが、それはなぜか

イチロー氏 まず、マリナーズの選手と一緒に練習をしているのは、フリオ(ロドリゲス)は特に毎日キャッチボールをやって、時には一緒にノックを受けて、スローイングをすることもある。コーチという立場ではないが、まずは技術を実際に見せることができる状態にある、それをキープすることで選手たちが見て理解できる、目で見て理解することと、耳で聞いて理解することでは全く次元が違う理解になる。それを彼らにも、僕ができるうちは、僕が元気なうちはそれを続けたいと思っているし、それは毎日やっていなかったら、ホームにチームが戻ってくるときだけやろうと思ってもできない。これは続けていないとできないことなので。日本の高校生たちとも僕は交流があるので、彼らでもやっぱりプロの技術というものを間近で見せることは凄く重要なことで、それを引退してからやっているが、やっぱり動ける間は、どこまでもそれを続けたいし、これがいつ出来なくなるのかというのも見定めたい、それがひとつのサンプルになるんじゃないか。

――発表を聞いて、どういう気持ちだったか

イチロー氏 (放送が始まってから)15分過ぎてもなかったので、ひょっとしてないかもしれないという不安の方が強くなってきて、(笑い)すごくほっとした。これからいろんな感情が出てくるんだと思う。

――これまで7回、クーパーズタウンに来ている。その時感じた野球殿堂と、今の気持ちはどう違う

イチロー氏 僕にとってクーパーズタウンは7回、訪問していて、行くたびにすごくいい気持ちになって、自分のホームみたいな感覚。だから僕の中では、クーパーズタウンというのは現役中に訪れる場所で、(現役が)終わってから行く場所じゃないと思っていたが、初めて終わってから行くことをすごく楽しみにしているし、その時どういう感情になるのか、今想像していないが、今までとは違う気持ちが生まれるかもって思っている。

――今回の殿堂入り、誰にどんな言葉を贈ることになるのか

イチロー氏 挙げればきりがないが、まずは妻。一緒に戦ってきてくれて支えてきてくれた存在で、まずは妻に感謝の気持ちを伝えたい。あとは、僕にとって最も大きな影響を受けたのは仰木監督だと思う。仰木監督の存在がなければ、おそらくカタカナのイチローにもならなかっただろうし、人にこれだけ知ってもらうこともなかったと思う。そもそも野球という存在がなければ、僕は一体、何だったんだろうって、何者かになれたんだろうかっていう風に考える。今日、特にそう思う。だから人との出会いと少しの運、ですかね。努力することは当然として、この二つが大きく人生に影響するんだなって感じている。

――ヤンキースで学んだことは

イチロー氏 ヤンキースが特別だったのは、やっぱりジーターがいたヤンキースだったってこと。ヤンキースですごく気持ちがよかったのは、それぞれプロフェッショナルであったこと、特にあのクラブハウスはインパクトがあった。音がないクラブハウスは初めてだったし、その後も(経験が)ない。あのヤンキースのプロフェッショナルとしての意識というのは、改めてプロというのはこういう集団なんだと、こうあるべきということを教えてもらった、そういう時間だった。

――メンタル面を鍛えるにあたって大事なことを考えたりするか

イチロー氏 メンタルを鍛えたいなら、厳しい道を選ぶほかないんじゃないかな。楽な方へ行くとメンタルは弱くなっていくし、まあ、技術的なこともそう。楽な方にいくと身体は怠けていくのと同じように、メンタルもそうだと思う。楽な方、楽な方へ行けば当然弱くなっていくし、挫折を知らない、負けを知らないメンタリティというのはすごく弱いと思うので、チャレンジして負け、その瞬間は負けるかもしれないが、それを糧に頑張る、それを克服していく、そうやって築き上げるものじゃない?ひとつ、ふたつの経験、少ない経験で強いメンタリティを獲得出来得るってことはないと思う。いかに厳しい道を選べるかに尽きると思う。

――これから先、やっていきたいこと、やってみたいことはあるか

イチロー氏 今、継続していることは継続していきたい。その他に、新しく取り組んでみたいこと?命を削ってまでやろうとするものなら、おそらく見えてこない、と思う。やっぱりそれが出来るのは野球でしかないので、そこまでのものはおそらく、出てこないと思う。期待(するの)は勝手だが、おそらく出てこないでしょ。野球をこれから、別の、別の野球の道を模索していく、そこで自分がエネルギーを注げることを期待している。

――今日、どのようにお祝いする

イチロー氏 お祝いする時間がないと思う。なかなかこの後も、明日が早いこともあって、家で妻と、お酒を一杯、乾杯するぐらい。後は特別、今日はないと思う。

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