勝負に絶対はあるのか。ボクシングの大手プロモーターである米国トップランク社のボブ・アラムCEO(93)が22日、スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(31=大橋)がWBO同級11位・金芸俊(キム・イェジュン、32=韓国)との防衛戦(24日、東京・有明アリーナ)で敗れる可能性について「今回はないと思っている」との考えを示した。
金は当初の挑戦者サム・グッドマン(オーストラリア)の負傷により、試合の約2週間前に急きょ決まった代役。海外ブックメーカーのオッズは井上の1・02倍に対し15倍と大差がつき、金が勝てばボクシング史上最大級の番狂わせと言える状況だ。
だが韓国は、現在は低迷しているものの、かつては多くの名王者を輩出した歴史がある。この日に横浜市内で開かれた公式会見に出席したアラム氏は「韓国の選手はタフで大変強いファイターがそろっている。金もそのようなタフさを見せてくれると思う」と高く評価した。
さらに「結果について予想はしない」と前置きした上で、60年以上ボクシング界にかかわってきたことから「経験上、急きょ決まった選手が番狂わせを起こすこともたびたびある」と指摘。その言葉どおり、2001年には試合2週間前に代役となってIBFスーパーバンタム級王者レーロホノロ・レドワバ(南アフリカ)を破ったマニー・パッキャオ(フィリピン)、19年には試合1か月前に代役となり3団体統一ヘビー級王者アンソニー・ジョシュア(英国)を破ったアンディ・ルイス(米国)などの例がある。
しかし、アラム氏は「今回はそのようなことはないと思っている」と世紀の大波乱の可能性は低いとみており「いい試合を期待している」と両雄に呼びかけた。
アラム氏は、井上が6階級を制覇したパッキャオと比較される存在であることを問われると「パッキャオはもちろん素晴らしいが、井上のキャリアの方がより伝説的だ」と返答。井上が無敗であることから「パッキャオは注意を欠いた試合をし、KOで負けることもあった。井上は規律正しく、正解となるパンチを繰り出せる選手。パッキャオを落としているわけではなく、井上の方がKOもありテクニックもある選手だ」と絶賛した。
「井上が唯一無二で、どれだけ素晴らしい選手か、日本国内はもっと感謝してほしい。彼の能力は、私がボクシングに携わってきた中でも見たことがない。どの階級でもいなかったのではないか」と史上最強ボクサーの称号を与えた。
井上の今後については、次戦は米国ラスベガスで行うことを井上陣営と交渉中。「井上は世界最高峰の選手であり、アメリカのスポーツファンは井上の試合を楽しみにしている」と、本場でもモンスター上陸の期待が高まっているという。その後はサウジアラビアでの試合も計画されているが「その次はその次。みなさん、焦らずお待ちください」と話すにとどめた。